自民・みんなからお株奪われた民主
経済学の世界でも、短期的には失業率とインフレ率の間に逆相関関係(フィリップス曲線)があり、犠牲率の概念が広く共有されている。つまり、犠牲率とは、インフレ率を低下させるためには、どの程度の失業率が上昇するかということであるが、これ以上下げられない下限の失業率より現実の失業率が高ければ、インフレ率を少し高めて失業率を低下させられる。
かつて筆者は、民主党の勉強会において連合の古賀伸明会長に金融政策で雇用の確保ができることを話したことがある。同氏はかなり驚いて興味を示していたが、いつの間にか立ち消えになった。実のところ、民主党が欧州左派政党のように金融政策を雇用政策の柱として位置づけることを望んでいた。
今回の総選挙では、本来左派政党が主張すべき金融政策について、安倍自民や渡辺みんなから声が出て、民主党などの左派政党はそれを否定する側になっている。欧州では、まったく逆で左派政党から言い出すが、合理的な政策なので右派政党も取り入れているのが実情だ。
自民やみんなからお株を奪われた民主党。これでは総選挙で苦戦するのもやむを得ないだろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。