財務体質の改善にはほど遠い
シャープの主力工場のうち、テレビ用大型液晶パネルの堺工場(堺市)は、鴻海との共同運営に切り替えたことで操業が安定。米アップルのスマホ「iPhone5」向けのパネルを生産する亀山第1工場(三重県亀山市)も現在はフル稼働。こうした中、タブレットやパソコン、スマホ向けの中小型パネルを生産する亀山第2工場(三重県亀山市)の稼働率アップが課題。クアルコムとの提携が進展すれば、共同開発した新型パネルを生産できる可能性もある。
しかし、シャープ再建という観点から見ると、今回の提携ですべてを解決するわけではない。まず出資額は最大99億円にとどまり、財務体質改善にほど遠い。業績悪化などから財務の健全性を示すシャープの自己資本比率は9.9%(9月末)に下がっており、99億円でこれを押し上げる効果はわずか。さらには、今回の出資は使途が新型パネルの開発関連に限定され、自由に使えるわけではない。
シャープは9.9%の出資比率で資本受け入れに合意した鴻海の他にも、米半導体大手、インテルとも資本提携交渉しているが、不調とも伝わる。銀行団が支えているため資金繰りに事欠くわけではないが、シャープの株価が低迷を続ける株式市場からは「抜本策が必要だ」(外資系アナリスト)との声が強まるばかりだ。