福井県の敦賀原子力発電所の再稼働がきわめて困難になったことで、日本の原発推進の象徴的存在である「日本原子力発電」の存続が危ぶまれている。
敦賀原発2号機の原子炉建屋の直下を走る断層(破砕帯)が、原子力規制委員会の調査で「活断層の可能性が高い」ことが2012年12月10日、わかった。日本原電が活断層ではない明確な根拠を示せなければ、2号機は国内で初めて安全面を理由に廃炉を迫られることになる。
稼働ゼロでも売上高「1000億円超」
日本原子力発電は、1957年に電力9社と電源開発(当時は国有会社)が共同出資して設立した原発事業会社。現在は東海第2、敦賀1号機と2号機の3基の原子炉を保有し、発電した電力は株主である電力各社に販売している。
東海第2は78年11月に営業を開始。出力は110万キロワット。敦賀原発2基の総出力は151万7000キロワット。1号機は1970年3月14日に開業。発電した電気が同日開幕した大阪万博会場に送られ、「原子力の灯が届いた」とアナウンスされた。2号機は87年2月17日に営業運転開始した。
2011年3月の東日本大震災と東京電力・福島第1原発の事故で、現在は3基すべての稼働を停止。また敦賀原発には3号機と4号機の増設計画があり、敷地の造成工事は終わっているが、12年3月に予定していた本体着工は延期されている。
2012年3月期連結決算の売上高は1460億円、最終損益は128億円の赤字だった。
敦賀1号機と2号機が廃炉になれば、日本原電の発電能力は半分以下に落ち、業績回復の可能性はなくなる。建設予定の敦賀3号機、4号機もほぼ絶望だろう。残る東海第2も、東海村が廃炉を求めており、再稼働のめどは立っていない。
経済産業省によると、日本原電が12年度中に3基すべてを廃炉にした場合、12年3月末の純資産1626億円を上回る2559億円の損失が発生すると試算している。
12年3月期連結決算で、すべての原発が稼働していないのに日本原電が1000億円超の売上高が計上できたのは、電力会社が将来の再稼働を見込んで支払っている「基本料金」のおかげ。「廃炉」が決まれば、売るべき電力がなくなるので事業が成り立たなくなり、売上げも立たなくなる。
日本原電に、存亡の機が迫っている。