日ハム入団の大谷はどこも悪くない 他球団スカウトの「甘さ」こそ問題だ

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   米大リーグと日本のプロ野球、どちらに進むかが注目された花巻東高・大谷翔平投手は、ドラフト1位指名を受けた北海道日本ハムファイターズへ入団すると発表した。

   「正しい選択だった」との歓迎が多い一方、ドラフト前に「メジャー宣言」したことは他球団の指名にも影響を与えたとの声もある。

「日ハムに入ればメジャーに早く行ける」?

大谷投手の日ハム入りを報じる各紙。ドラフト制度に物申した星野監督の名前も
大谷投手の日ハム入りを報じる各紙。ドラフト制度に物申した星野監督の名前も

   大谷投手が自ら日本ハム入りを表明した2012年12月9日、テレビ各局は夜のスポーツニュースで大きく取り上げた。NHK「サンデースポーツ」に出演した大リーグ、ミルウォーキー・ブルワーズの青木宣親選手の感想は「個人的にはよかったと思う」。また「マイナーの選手から『過酷だ』『昼食がパン1枚』と聞く」とも明かし、育成システムが整った日本の球団入りを評価した。

   TBSの「S1」では、大谷投手の日本ハム入りをテーマに4人の野球関係者が議論した。ただひとり、野球解説者の駒田徳広氏は「日本でプレーするのはいいこと」と前置きしつつも、「結果がこう(大リーグではなく日本のチームへの入団)なら、欲しいチームはいくらでもあったでしょう」と口にした。ドラフト会議前に大谷投手自身が「大リーグを目指す」と表明したから、指名を回避した球団もあったのではないか、とにおわせたのだ。

   ドラフト制度そのものも議題に上った。「改善の余地がある」とする槇原寛己氏は、今回をきっかけに、「日本ハムに入ればメジャーに早く行けるシステムがある、と思うのではないか」と予測。仮に他球団が今後の入団交渉の際に「将来の大リーグ挑戦」を約束するようになれば、球界の方向性が変わるかもしれないとの考えを示した。

   スポーツ紙は、東北楽天ゴールデンイーグルスの星野仙一監督の発言を報じた。大谷投手はチームのおひざ元である東北の大型新人だけに「日本球界に行くんなら、ウチも指名しとった」とスポーツ報知の取材に回答。大リーグ行きを前提とした指名回避だったのに、「これをやったんでは、ドラフトの意味がない」と続けた。またスポーツニッポンによると、大谷投手の「心変わり」について「やっちゃ駄目」とコメントしたという。ただ批判の矛先は大谷投手や日本ハムというよりは、ドラフト制度の不備だったようだ。

ドラフトは「プロ野球側の都合だけで決めた制度」

   スポーツジャーナリストの菅谷齊氏に聞くと、「大谷投手と日本ハムには何の落ち度もない」と断言する一方、他球団や球界全体の一連の反応に厳しい目を向ける。

   ひとつは、スカウトの「甘さ」だ。日本ハム以外の球団は、本当に大谷投手の獲得を望んでいたのなら、本人の大リーグ挑戦の本気度を含めた真意、国内でのプレーの可能性など、高校の野球部の監督をはじめ関係者にどれほど食い込んで情報をつかんでいたのか、とその姿勢を疑う。日本ハムとの間に密約があったのでは、とささやく声に対しては、「その年のナンバーワンの選手を指名するというポリシーを貫き、自ら乗り出して説得に当たった栗山英樹監督にしてやられただけ。情報戦に負けたジェラシーに過ぎません」と一蹴する。

   もうひとつ菅谷氏が問題視するのは、選手本人との直接交渉が制限される日本の球団とは違って、大リーグのスカウトや代理人の活動は自由に許される点だ。接触機会が増えれば選手も「夢の大リーグ入り」のイメージが描きやすい。このまま日米間でスカウティングに関する位置付けが不明瞭なまま、球界が何の対策も施さなければ、高校生の有望株が大リーグの球団から声がかかるケースは今後も出てくるだろう。

   ドラフト制度自体にも疑問を呈する。「そもそも(プロ入りに)『無防備』なアマチュア選手に対して、プロ野球側の都合だけで決めた制度」というのだ。「例えばプロ側が、高校や大学の選手の育成支援をしているのなら、ドラフトを避けて大リーグを目指す動きを批判するのも理解できます。何も支援せず、育った選手を言わば勝手にプロ入りさせるだけの球界に、大谷投手が日米いずれかの進路を選ぼうとしたことを批判できるでしょうか」。

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