ドラフトは「プロ野球側の都合だけで決めた制度」
スポーツジャーナリストの菅谷齊氏に聞くと、「大谷投手と日本ハムには何の落ち度もない」と断言する一方、他球団や球界全体の一連の反応に厳しい目を向ける。
ひとつは、スカウトの「甘さ」だ。日本ハム以外の球団は、本当に大谷投手の獲得を望んでいたのなら、本人の大リーグ挑戦の本気度を含めた真意、国内でのプレーの可能性など、高校の野球部の監督をはじめ関係者にどれほど食い込んで情報をつかんでいたのか、とその姿勢を疑う。日本ハムとの間に密約があったのでは、とささやく声に対しては、「その年のナンバーワンの選手を指名するというポリシーを貫き、自ら乗り出して説得に当たった栗山英樹監督にしてやられただけ。情報戦に負けたジェラシーに過ぎません」と一蹴する。
もうひとつ菅谷氏が問題視するのは、選手本人との直接交渉が制限される日本の球団とは違って、大リーグのスカウトや代理人の活動は自由に許される点だ。接触機会が増えれば選手も「夢の大リーグ入り」のイメージが描きやすい。このまま日米間でスカウティングに関する位置付けが不明瞭なまま、球界が何の対策も施さなければ、高校生の有望株が大リーグの球団から声がかかるケースは今後も出てくるだろう。
ドラフト制度自体にも疑問を呈する。「そもそも(プロ入りに)『無防備』なアマチュア選手に対して、プロ野球側の都合だけで決めた制度」というのだ。「例えばプロ側が、高校や大学の選手の育成支援をしているのなら、ドラフトを避けて大リーグを目指す動きを批判するのも理解できます。何も支援せず、育った選手を言わば勝手にプロ入りさせるだけの球界に、大谷投手が日米いずれかの進路を選ぼうとしたことを批判できるでしょうか」。