米国の代表的な新聞である「ニューヨーク・タイムズ」は、編集局で30名の人員削減を実施すると発表した。編集長のジル・エイブラムソンが2012年12月3日に配信した社内メモによると、編集分野の管理者を中心に希望退職者を募り、それでも目標数に達しなければ、指名解雇の手段にも訴える決意だという。
同紙は経営危機に襲われた2008年に100名の記者やデスクを解雇し、さらに2011年にも20名の人減らしを実行しているので今回で3度目の編集関係の人員整理になる。
つい最近も広告局で30名の希望退職者の募集
電子版などのオンライン配信に力を注ぐNYタイムズは、印刷版のベテランなどを戦力から外す一方で、デジタル要員を増強したので結果的に編集局員がおよそ1150人にも膨れ上がり、2003年と同じ規模だという。
エイブラムソンによれば、広告の激減に苦しむ営業サイドではこの数年で人員が6割以上も減ったという。つい最近も広告局で30名の希望退職者の募集を発表したばかりであった。
2012年10月末に発表された今年度7~9月期の広告収入は印刷版のみならず電子版でも前年同期に比べてマイナス成長であった。印刷版では10.9パーセント、そして電子版は2.2パーセントの低下を記録した。
「課金制は大成功だが、広告を取り巻く環境は極めて不安定」
内外の支局などでの経費をカットする措置だけでは広告の不振を埋めることはできず、新聞作りの核ともいえるベテラン記者・編集者(当然給料も高い)に戦力外通告を出すところまでNYタイムズは追いつめられているようだ。
アーサー・サルツバーガー会長は、「課金制は大成功だが、広告を取り巻く環境は極めて不安定で、これが近い将来に是正されることはないだろう」と声明のなかで語った。
新聞社の世代交代は否応無しに進んでいるようだ。
(在米ジャーナリスト 石川幸憲)