シャープ「復活」を託す「IGZO」 超高精細液晶ディスプレー「フルハイビジョンの4倍」

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   シャープが、新技術による半導体「IGZO(イグゾー)」を使った高精細の液晶ディスプレー製品を次々に投入している。スマートフォン向けの小型製品だけでなく、32型の業務用モニターの開発にも成功した。

   経営不振に苦しむシャープが、中核の液晶事業で独自の技術力をてこに業績回復を目指す。

スマートフォンに使えば、バッテリーの「持ち時間」が長くなる

IGZOを採用した「4K2K」32型ディスプレー「PN-K321」
IGZOを採用した「4K2K」32型ディスプレー「PN-K321」

   経営再建中のシャープが業績の「V字回復」を達成するには、主力の液晶事業の立て直しが急務だ。12月4日には、米半導体大手クアルコムからの出資を受け入れて新型パネルを共同開発すると発表した。一方で、研究開発に約10年の歳月を投じてきた「IGZO」を応用した新型液晶の製品化に力を注ぐ。特徴は「高精細」「省電力」「タッチパネルの高感度化」の3点だ。

   従来の液晶に比べて高精細、省電力を実現するカギは、「TFT」と呼ばれる液晶に欠かせない半導体素子にある。液晶画面で映像を再生する仕組みは、薄いガラス基板に挟まれた液晶を透過する光を画素ごとにオン、オフさせるというものだが、画素をオン、オフする回路に使われるのがTFTだ。画素ごとにTFTが必要なので、1枚のガラス基板には数百万個のTFTが並ぶ。従来TFTに用いられた素材の代わりにIGZOを応用することで、TFTの面積が縮小できた。

   シャープBtoBプロモーション部に取材すると、2013年2月15日に発売予定の「4K2K」表示を可能とした32型ディスプレーを例に説明してくれた。

   これまでの32型フルハイビジョン(FHD)に比べ4倍の画素数があるため、従来モデルの1画素分のスペースに4画素を高密度設計する必要がある。だがTFTのサイズが同じでは、画素の中で光を通過させるスペースが小さくなり、このままでは画面が暗くなる。TFTの小型化が図れるIGZOの特性が寄与することにより、実用化に十分な輝度を確保した高精細ディスプレーを実現することができたと話す。

   また、IGZOの優れた特性のひとつに「電流漏れが少ない」(シャープ担当者)ことがあるという。一般的に静止画を画面表示する際には1秒間にTFTがオン、オフを繰り返し60回の画像「書き換え」を行っていたが、IGZOのこの特性により書き換えの回数が格段に少なくなり、従来比5分の1~10分の1の低消費電力化が図れるのだという。IGZO技術によるディスプレーをスマートフォンに使えば、省電力によりバッテリーの「持ち時間」が長くなるメリットが得られる。

微弱信号を感知し、爪で触っても画面が反応

   体感的に大きく変わるのが、タッチパネルの感度の高さだ。シャープ担当者は「鉛筆やボールペンの先、爪で軽く触っても反応します」と明かす。その理由も「書き換え」回数にあるそうだ。

   1秒間に画面を60回書き換えている場合、TFTが60回駆動を繰り返し、画面表面にノイズが発生する。一方で、鉛筆の先や爪でタッチパネルを触れる程度だと微弱な信号しか出ない。ノイズが継続的に出ている状態では、弱い信号では判別されにくく、タッチしても反応が鈍くなるのだ。IGZOの場合は書き換えが少なくなることでオンオフが起きない休止状態が長くなる。当然、この間はノイズがほとんど出ないため、爪で触ったような微弱信号でも感知されやすくなるのだ。

   2012年11月29日、初のIGZO搭載スマートフォンがNTTドコモから、また12月7日にはKDDIからタブレット型端末が発売されている。2013年2月発売の32型業務用モニターは、中小型液晶だけでなく比較的大きなサイズでも商品化が可能であることを示している。「パソコン市場を開拓したい」との目的があったようだ。スマホ用は天理工場、タブレット用と32型ディスプレーは亀山第2工場で量産を始めており、需要によってはさらに大型製品への応用も将来考えられる。シャープ浮上の切り札として、IGZOへの期待は高い。

姉妹サイト