シャープが、新技術による半導体「IGZO(イグゾー)」を使った高精細の液晶ディスプレー製品を次々に投入している。スマートフォン向けの小型製品だけでなく、32型の業務用モニターの開発にも成功した。
経営不振に苦しむシャープが、中核の液晶事業で独自の技術力をてこに業績回復を目指す。
スマートフォンに使えば、バッテリーの「持ち時間」が長くなる
経営再建中のシャープが業績の「V字回復」を達成するには、主力の液晶事業の立て直しが急務だ。12月4日には、米半導体大手クアルコムからの出資を受け入れて新型パネルを共同開発すると発表した。一方で、研究開発に約10年の歳月を投じてきた「IGZO」を応用した新型液晶の製品化に力を注ぐ。特徴は「高精細」「省電力」「タッチパネルの高感度化」の3点だ。
従来の液晶に比べて高精細、省電力を実現するカギは、「TFT」と呼ばれる液晶に欠かせない半導体素子にある。液晶画面で映像を再生する仕組みは、薄いガラス基板に挟まれた液晶を透過する光を画素ごとにオン、オフさせるというものだが、画素をオン、オフする回路に使われるのがTFTだ。画素ごとにTFTが必要なので、1枚のガラス基板には数百万個のTFTが並ぶ。従来TFTに用いられた素材の代わりにIGZOを応用することで、TFTの面積が縮小できた。
シャープBtoBプロモーション部に取材すると、2013年2月15日に発売予定の「4K2K」表示を可能とした32型ディスプレーを例に説明してくれた。
これまでの32型フルハイビジョン(FHD)に比べ4倍の画素数があるため、従来モデルの1画素分のスペースに4画素を高密度設計する必要がある。だがTFTのサイズが同じでは、画素の中で光を通過させるスペースが小さくなり、このままでは画面が暗くなる。TFTの小型化が図れるIGZOの特性が寄与することにより、実用化に十分な輝度を確保した高精細ディスプレーを実現することができたと話す。
また、IGZOの優れた特性のひとつに「電流漏れが少ない」(シャープ担当者)ことがあるという。一般的に静止画を画面表示する際には1秒間にTFTがオン、オフを繰り返し60回の画像「書き換え」を行っていたが、IGZOのこの特性により書き換えの回数が格段に少なくなり、従来比5分の1~10分の1の低消費電力化が図れるのだという。IGZO技術によるディスプレーをスマートフォンに使えば、省電力によりバッテリーの「持ち時間」が長くなるメリットが得られる。