57歳の若さで亡くなった歌舞伎俳優の中村勘三郎さんについて、食道がんの病状が発表内容よりもっと重かったのでは、との声が出ている。関係者は、深刻な病状を分かっていたようだ。
「軽い肺炎のようなもの」「大げさなことじゃない」。
週刊新潮などが2012年11月15日発売号で中村勘三郎さんのICU(集中治療室)入りを報じたとき、所属事務所側は、こう言って重篤説を否定した。
手術は12時間と普通の倍ほどかかっていた
しかし、それから1か月も経たない12月5日未明、勘三郎さんは、都内の病院で亡くなった。伝えられていた食道がんではなく、重い呼吸不全に当たる急性呼吸窮迫症候群という聞き慣れない名前だった。
勘三郎さんに食道がんが見つかったのは、6月だった。内視鏡でがんをつまんで取るなどして治るとされる初期のがんと事務所側は説明した。7月27日の手術は、12時間もかけて行われたが、術後の経過は順調で、病棟内を歩くほど回復したともした。
その後、肺炎になって呼吸不全の重症となり、専門的な病院に2度転院したものの、そのまま帰らぬ人となってしまった。
専門家によると、勘三郎さんの症状は、手術のときから深刻だったらしい。
12月5日放送の日テレ系「スッキリ!!」では、消化器系の病気に詳しい吉祥寺セントラルクリニックの矢端正克院長が取材にこう答えた。
「12時間という手術時間から考えると、かなり進行していたのかな。または、転移がかなりあったのかな、と推測はできます」
食道がんの場合、普通は6時間前後だという。手術時間が長ければ長いほど、呼吸不全といった合併症になる危険性は高まるとし、勘三郎さんの場合も、手術が原因でなったとも推測されるとした。新潮などは人工肺を着けていたと報じており、矢端院長は、それが長引くと肺機能が衰え、どんなベテランの医者でも手に負えなくなると指摘した。