アニメ映画「攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL」など世界的な大ヒット作品を生み出している押井守監督(61)が、現在上映中の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」と、庵野秀明監督(52)を痛烈にこき下ろしている。
押井監督は、「エヴァ」は「いつかどこかで見たコピーの連発」であり、庵野監督にはテーマもモチーフもなく、こんなものは映画として成立していなので自分は観るのをやめた、と批判している。
「エヴァ」の世界観は曖昧で、内容も無い?
押井監督が「エヴァ」を批判したのは2012年12月1日発行の「ニコニコ動画」のメールマガジン「押井守の『世界の半分を怒らせる』。第6号」。押井監督と庵野監督は駆け出しの頃に宮崎駿監督(71)にその才能を見出され、一緒に仕事をしてきた親しい関係にある。もちろん押井監督が兄貴分で、だからこそ庵野作品について最も適切に語れるのだろう
「エヴァ」はキャラクターも物語(ストーリー)もダメだと斬りつけている。
「ステロタイプのオンパレードで、いつかどこかで見たもののコピーの連発。キャラクターが口にする台詞のあれもこれも、決め処は全て私生活におけるあれこれの垂れ流し」
そして、どうしてこんな作品が出来てしまったのかといえば、庵野監督には表現すべきテーマや、固有のモチーフが無いからなのだそうだ。そのため「エヴァ」の世界観は曖昧で、内容も無い。世界観がなければ映画として成立しないため、自分にとって「エヴァ」は観る必要のないものだと切り捨てている。
それでもなぜ「エヴァ」が大ヒットを続けているのかについても触れている。まず、庵野監督について、映像表現が大好きで制作意欲は人並みはずれて強力で、演出能力は抜群だと褒めた。その上で、「抽象度の高いアニメという特殊な映像表現だからこそエヴァは成立した」としている。
制作とファンが望む限り「エヴァ」は永遠に完結しない
作画と声優の複合でキャラクターは作られるが、生身の役者に比べ、自由で強い感情移入を視聴者に促す。また、テーマやモチーフが無くても、視聴者がそれぞれ勝手に頭の中でストーリーを作っていく。
「彼らは欲しいものは、演出の介在など無視してでも必ず手に入れるのです。『エヴァ』に関して言うなら、作り手と受け手の予定調和的な共犯構造が『みんなでシアワセになる』ことを可能にしている」
テーマやモチーフがないわけだから、作品の落とし所(終結)があるはずはなく、製作者側とファンが望む限り、「エヴァ」は永遠に終わらない、と皮肉とも受け取れる発言をしている。
押井監督はこうしたヒットの構造には否定的で、
「私個人としては、その特殊構造内に生きることは、はっきりと表現者としての停滞であると確信しておりますので、遠慮しておきます」
と結んでいる。
押井監督のメールマガジンはネットで大きな話題になっていて、
「庵野信者は未だに、エヴァには深いテーマやドラマがあると信じているよ」
「押井のいうことはよく分かるが、エヴァは面白いからそれでいいんじゃないか?」
などと議論が盛り上がっている。