中国の株式相場が低迷している。上海総合指数はいまや2007年のピーク時に比べて3分の1の水準にまで落ち込んでいる。
世界経済の「けん引役」として、世界の株式市場をもリードしてきた中国だが、経済成長の鈍化とともに、株式への投資熱もすっかり冷えてしまったようだ。
バブル崩壊後の日本市場に「似ている」
中国・上海証券取引所の人民元建てA株と外貨建てB株の双方に連動している上海総合指数は2012年11月27日に、前日比26.30ポイント安の1991.17で引け、終値ベースで2000を割り込んだ。それ以降3日連続で年初来安値を更新し、29日の終値は前日比10.035ポイント安の1963.488と、09年1月16日以来約3年10か月ぶりの安値となった。
大和証券投資戦略部シニアストラテジストの由井濱宏一氏は、「11月にあった下落は需給懸念によるものです。IPO(株式の新規公開)や増資の動きが相次ぎ、マーケットの供給増が嫌われました」という。
しかし、事態はもっと深刻だ。由井濱氏は、「バブル崩壊後の日本市場に似た状況にあります」と指摘する。
中国・上海株式市場は外資による売買を制限しているため、中国の個人投資家が7割を占めているとされ、その特徴を「投機的で、センチメント(市場心理)がダイレクトに反映されるマーケットです」と話す。
つまり、市場の雰囲気によって株価は一方向に振れやすいわけだ。
株式市場が低迷する原因は、経済成長の鈍化にある。2ケタ成長を遂げてきた中国だが、同時に不動産バブルが発生。それとともに国民生活に格差拡大が生じた。格差拡大は社会の不安定化を招き、政府は「成長モデルの転換」を求められたのは周知のとおり。
同時に株式市場は値下がりが長期化し、個人投資家の投資マインドが冷めたこともある。経済成長への先行き不安から預金を増やし、株式から資金を引き揚げる傾向が強まっている。
「サプライズ政策」に期待するが…
前出の大和証券シニアストラテジストの由井濱宏一氏は、「中国経済は2012年第3四半期まで、7四半期連続で国内総生産(GDP)の成長率が鈍化しています。格差社会への不満があることは確かですが、その一方で大胆な成長政策を打たない政府と共産党への失望感もあります。いまの株価は底値圏にあると思いますが、よほどのサプライズがなければ、そう簡単には回復しないでしょう」と、分析する。
「よほどのサプライズ」とは、たとえばリーマン・ショック後に4兆元を投じたような大胆な景気刺激策や金融緩和策だ。
とはいえ、政府としてはそこにはふれたくない。再び不動産バブルが起こり、「格差」が拡大する恐れが生じる。「政府は格差是正、つまり経済成長の追求から富の分配見直しに舵を切ったわけですから、格差縮小を優先しないと(政府と共産党の)存亡にかかわってきます。結果的に『サプライズ』はなくなり、株式市場全体が上昇していくことは厳しいといえます」(由井濱氏)と、どうにも手の施しようがないようでもある。
ちなみに、上海総合指数の最高値は5年前の共産党大会の期間中に付けたものだった。