証券・保険にも公的資金注入 「秩序ある破綻」に向け安全網構築

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注入対象は「金融システム上、重要な金融機関」

   だが、公的資金注入は、一つ間違えればモラルハザードを招くし、金融行政への信認も揺るがしかねない。米国では、リーマン・ショック後のAIGへの多額の公的支援の結果、政策当局への信頼感が低下するというマイナス面が強く意識され、2010年7月成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)では、どれほど重要・複雑な金融機関であっても、秩序だって破綻させ、公的資金を使って救済しないことを法制化している(預金保険機構「預金保険研究」第14号=2012年5月発行)。

   11月12日の金融審で、金融庁の森本学・総務企画局長は「救済目的の資本注入にはしない」と強調したが、債務超過でなくても預保機構が経営権をもつ場合があるので、「政府が資本注入して持った株式が紙切れになるのを避けようとし、破綻処理に踏み切りにくくなる恐れがある」(金融論の学者)との指摘が出ている。

   注入の対象とする「金融システム上、重要な金融機関」をどう線引きするのかという問題もある。金融庁案は対象を「金融業全体」としており、ノンバンクのほか、ヘッジファンドのようにリスクをとって大もうけを目論む者も含まれることになり、歯止めがきかなくなるとの懸念はぬぐえない。

   さらに、綻処理で生じた損失は金融業界全体に事後的に負担させるといっても、証券・保険という「他業界」の処理コストを負わされることには、銀行から早くも強い反発が出ており、調整は難航しそうだ。

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