(ゆいっこ花巻;増子義久)
寒さを吹き飛ばすような熱気が手狭な談話室にあふれかえった―22日、花巻市のまちづくり部生涯学習課が企画した「ボランティア教室」の参加者とゆいっこ花巻の「ゆいっこお茶っこカー」による炊き出し部隊が釜石市の甲子第7仮設団地で合流。仮設団地の入居者10人と合わせた総勢30人の交流に花を咲かせた。
この日は市民講座「はじめてみよう!ボランティア教室」(全6回)の第4回目で、テーマは「被災地支援」。登録者20人のうち11人が参加し、ゆいっこ花巻が全面協力した。一行はまず壊滅的な被害を受けた大槌町へ。同町で被災し、現在、花巻市に避難している平石美枝子さん(55)が添乗員としてマイクロバスに同乗し、「3・11」の悪夢のような状況を再現した。
「町長を含めた役場の有能な人材が40人以上もここで犠牲になりました」―。「保存か解体か」で揺れる旧大槌町役場の現場に到着した一行は平石さんの説明に息を飲んだ。瓦礫の荒野と化した、その目と鼻の先に海が迫っていた。市街地を一望できる高台に立った時、みんなは「何もない。信じられない」と言って、その場に立ち尽くした。
仮設団地では先発隊が芋の子汁やおむすび、サツマイモなどを準備して待っていた。11人の参加者のうち2人を除いて仮設訪問は初めて。手編みの襟巻、手作りの地蔵人形、折紙の箸置き、フクロウの置物、手作り菓子、鉢植えの花、自家製のジャンボ白菜…。全員が心のこもったお土産を持参した。仮設団地のまとめ役をしている沢口綾子さん(54)がお礼の言葉を述べた後、ポツリとつぶやいた。「震災から間もなく2年。でも、心の中を全部吐き出せないでいる自分がまだいるんです」
明るい振る舞いの陰に垣間見える苦悩…。その一端を少しでも知ろうと、全員が寄り添うようにして話に耳を傾けた。川原田弘志さん(71)が言った。「これだけの被害を受けているのにこの先も海の見える場所に住みたいという人がいた。考えてみれば、私が山の近くに住みたいと思う気持ちと同じ。被災者の人たちの気持ちを無視した勝手な押し付けは間違いだと悟らされた」。一行はこの日の体験を今後のボランティア活動に生かしたいと口をそろえていた。
ゆいっこ
ゆいっこネットワークは民間有志による復興支援団体です。被災地の方を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資提供やボランティア団体のコーディネート、内陸避難者の方のフォロー、被災地でのボランティア活動、復興会議の支援など、行政を補完する役割を担っております。
ゆいっこは、「花巻」「盛岡」「北上」「横浜」「大槌」の各拠点が独立した団体として運営しておりますが、各拠点の連携はネットワークとして活用しております。
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