全日空(ANA)は2012年12月1日、開業60周年記念の式典を羽田空港国際線ターミナルで開いた。伊東信一郎社長は式典後に囲み取材に応じ、羽田空港の国内線発着枠の割り当てが日本航空(JAL)の2倍以上の8枠に決まったことについて、ANAが「経営破綻した事業者は枠の配分を受ける資格がない」などと主張してきたことを念頭に、「その結果だと受け止めている」と述べた。
ただし、ANAが主張している「JALへの公的支援による競争環境のゆがみ」については、「ゆがみ是正と発着枠の問題とは全く違う話」と述べ、国交省に対して引き続きJALの経営を監視するように求めた。
発着枠はANA8に対してJAL3
国土交通省は11月30日、13年3月から1日25便増える羽田空港の国内線発着枠の割り当てを発表。12枠をJALとANAで分け合うことになっていたが、ANA8に対してJAL3と、大幅な差がついた。配分を決める評価基準で、JALが公的支援を受けていた2年2か月について「自力では運航が続けられなかった」として「ゼロ点」として評価したためだ。有識者による国土交通省の小委員会では、
「実際に運航されていたにもかかわらず、公的支援を受けていた期間をゼロ点として評価するのはおかしい」
などと異論が相次いでいたが、国交省が押し切った形だ。
伊東社長は、
「(有識者による)委員会で議論された結果だと思っている。私どもは地方路線の就航をしっかりこれまでもやってきたし、貴重な発着枠なので、今後も利用者の利便性がもっと上がるように努力することだと、改めて思っている」
と述べ、委員会で「経営破綻した事業者は枠の配分を受ける資格がない」と主張したことについては、
「ひとつの基準として、そういう主張をさせていただいた訳で、委員の皆さんがそういう観点を含めて議論をされた結果だと思っている。(8枠は)その結果だと受け止めている」
と、主張が認められたことを評価した。ANAが主張する「競争環境のゆがみ」については、
「ゆがみ是正と発着枠の問題とは全く違う話だと認識している」
と断言。発着枠の傾斜配分でも「ゆがみ」は解消されていないとの見方を示した。国交省は、8月10日に「日航の企業再生への対応について」と題した文書を発表し、JALの経営を監視していくことを表明している。この文書について、伊東社長は
「あの実行というのは、しっかりやっていただく、ということ」
と、国土交通省に対して釘を刺した。