マルタやクロアチアから輸入
マグロの資源量は絶滅するほど危機的な状況ではないが、漁獲枠を設けるなど適正な資源管理が必要となっている。日本にとって最も大切な漁場となる太平洋のクロマグロは1970年ごろから減少に転じたが、1980年代には底を打って回復に向かった。2000年代以降は横ばいか、減少傾向にあるとされる。大西洋のクロマグロは1950年代から1970年代の中盤にかけて資源が増え、その後は下落に転じたが、1990年代から資源回復の兆候があると指摘されている。
2010年には野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約の締約国会議で、大西洋産クロマグロの国際取引を禁止する提案が出され、議論を呼んだ。この時は日本が、「ICCATが的確に資源管理すべきだ」と反対し、中東やアフリカの漁業国の支持を得て否決した経緯がある。
2010年の世界のカツオ・マグロ類の漁獲量433万トンのうち、日本の漁獲量は49万トンと1割に過ぎないが、台湾、インドネシア、韓国などから25万トンを輸入している。日本の消費量は74万トンとなり、世界最大の輸入国であり、消費国だ。クロマグロは2.4万トン消費しているが、マルタ、クロアチアなどからの輸入が6割を占める。
それだけに日本にとって資源確保は死活問題で、水産庁はクロマグロの稚魚を捕獲して養殖する国内の生簀の規模をこれ以上拡大しないよう求めるなど、率先して資源管理に力を入れている。
大西洋クロマグロの漁獲枠が2003年以来10年ぶりに拡大するのは、世界最大のマグロ・カツオ類の消費国である日本にとって朗報だが、今回の漁獲枠の拡大は日本の年間消費量からみると微増にとどまり、高級品であるクロマグロの価格に与える影響は限定的とみられている。