クローズアップ現代の放送以降患者が激減?
トラブルの背景には、歯科医が増えすぎて経営状況が悪化していることが挙げられるという。厚生労働省の発表によると、10年末時点で全国の歯科医師数は10万1576人、12年8月末時点で歯科診療所の数は6万8439施設となっている。歯科インプラント治療は保険がきかず、歯科医が治療費を自由に設定できる「自由診療」のため、高い収益が得られる。番組に登場した歯科医師は1本40万円と設定し、歯科インプラント治療だけで年2500万円の利益を得ていた。「インプラントは歯科医の救世主。手術を打てば打つほどうるおう」とまで話していた。
追い討ちをかけるように、総合情報誌「FACTA」12月号(12年11月20日発売)に「『インプラント治療』が日本から消える!」という記事が掲載された。クローズアップ現代の放送以降患者が激減したため、優秀なインプラント医が海外に出て行ってしまい、日本でまともな歯科インプラント治療が受けられなくなっている。その結果、将来は富裕層だけが海外でインプラントの恩恵に預かるようになる可能性もある、というのだ。
国民生活センターによると、12年度に入って寄せられた歯科インプラント治療に関するトラブルの相談は、2012年11月18日時点で70件だという。11年度は11月15日時点で49件、10年度は48件だったので、さらに件数増加のペースが上がっている。また、10年度は年度末時点で82件、11年度は101件にまで増えており、12年度もここからさらに増えるとみられる。
訪問歯科診療をすすめる歯科医院の団体「全国介護歯科協会」のブログでは、歯科インプラント治療のトラブルに関する報道を受けて、インプラント患者が減った医院がたくさんあると書かれている。
一方、都内のある医院に取材すると、治療を受ける患者は年々増えているという。トラブルに関する報道を見聞きして不安に思う患者も多いが、治療について事前に丁寧に説明することで「是非受けたい」と思う人が多いと話していた。トラブルが多いとはいえ需要のある治療法ということには間違いなく、腕の確かな医師をどう見つけるかがますます重要になっているといえそうだ。