「日本維新の会」(維新)代表代行の橋下徹・大阪市長をはじめ、地方自治体の首長と兼任する形で実質的に国政政党を率いる政治家が増えている。橋下氏や河村たかし・名古屋市長らに続き、総選挙の公示を目前にした2012年11月27日には滋賀県の嘉田由紀子知事が「日本未来の党」の結成を表明した。
地方の首長がリーダーとして国政に関与し、在職のままで「二兎」を追えるのか。総選挙の活動と首長業務は両立できるものなのか。
多忙な橋下氏、解散後の平日7日間で公務ゼロ
「国民の信頼を取り戻し、未来への選択肢となる政治軸を立てていきたい」「滋賀県知事は辞めず、日本未来の党の代表と兼務していきます」
嘉田知事は27日、大津市内での記者会見の場でそう述べた。だが、結成会見のニュースが報道されると、ネットやツイッターには「課題の多い滋賀県政は、国政の片手間にできることなのか」「県民をなめている。信頼を失うだけでは…」といった厳しい意見が多く寄せられた。
現時点に限っても国政政党の幹部と首長の兼任者は、橋下氏と維新幹事長の松井一郎・大阪府知事、未来の党への合流を予定する「減税日本・反TPP・脱原発を実現する党」 の河村氏、そして新たに加わった嘉田知事で4人目となる。
すでに本格的な選挙戦に突入するなか、4人は全国各地での選挙応援の一方で、知事や市長の職務をどれだけ全うできるのか。
第三極の中心である維新代表代行の橋下市長は衆院解散の前日に当たる11月15日、「維新候補の応援には平日の昼間にも行く」と報道陣に述べ、「(選挙戦は)市長の職務に影響のでない形でやる。大阪市政が滞った場合は厳しく批判してほしい」と強調した。
一般の地方公務員には法律で職務専念義務が課せられており、平日の昼間に職務から離れることは違反行為に当たる。ただ、選挙で選ばれる首長は「特別職」となるため、職務専念義務だけでなく、政治活動の制限の適用範囲外となる。これに照らせば、橋下氏の選挙応援の活動に法的な問題は一切ない。
ただ、衆院が解散した16日(金曜)以降の市長日程を見てみると、同日の公務は府市統合本部会議のみで、19日(月曜)から28日(水曜)までの7日間(土日祭日除く)で公務が入っているのは20日と22日の2日だけ。「都構想」を含む大阪改革を実現するため、打ち合わせや会議スケジュールがびっしり詰まった解散日以前の市長日程とは大きな開きがあった。
橋下氏はこの間、地元関西や四国、東北などを精力的に遊説。開会中だった大阪市議会は市長のスケジュールを優先させる形で、本来は12月中旬までの会期を大幅に短縮して11月20日で閉会し、都構想の法定協議会規約案などの提案も見送りとなった。
一方、松井府知事は「国家老(くにがろう)」役なのか、解散日以降も関西を離れることなく、平日はほぼ連日公務をこなしている。
「国政にかかわりたければ辞職せよ」
「橋下市長や松井府知事が国政にかまけて東奔西走するのは『職務専念義務』違反だ」
政治評論家の板垣英憲氏は11月27日、こんなタイトルの文章を自らのブログに掲載した。
板垣氏が「職務専念義務」違反と記したのはもちろん、法的な意味合いではない。首長としての道義的な姿勢を追及したもので、
「もし、全国を駆け巡っているとき間に、大阪市内、府内で天災や大事故が発生したとき、市民、府民の生命財産を守るためにすぐに指揮が取れるのか」と橋下氏らを批判した。
「行政の首長は在任中、市民、都道府県民のために職務専念しなくてはならず、国政にかかわりたいのであれば、首長の座を辞して行うべきである」
解散日以降の橋下市長の行動をめぐっては、ネットの掲示板などにも多くの声が相次いでいる。
「給料泥棒とはこのこと」「大阪市民、とことんなめられてるな」という批判と、
「特別職なんだから何も問題ナシ」「国を変えんと大阪も変わらん」といった意見がぶつかりあっている。