円安・株高に気分が高揚か 自民・安倍総裁の金融過激発言

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   衆院解散後、円安が進み、株価が急騰している。自民党の安倍晋三総裁が、政権を取った暁には日銀に無制限の金融緩和や建設国債の引き受けを求めてデフレ脱却を目指す方針を打ち上げ、市場が反応したのだ。

   対する民主党は「日銀の国債引き受けはあってはならない禁じ手だ」(野田佳彦首相)などと厳しく批判し、日銀の金融政策が衆院選の争点に浮上している。日本維新の会など第三極にも強力な緩和を求める声があり、一方、日銀の白川方明総裁は安倍総裁に反論しているが、選挙戦のさなかに日銀はかつてない「政治圧力」にさらされている。

自民党政権公約は「過激」発言を軌道修正

   自民党が21日発表した政権公約は、経済分野で年率2%の物価上昇目標や「大胆な金融緩和」「日銀法の改正も視野に政府・日銀の連携強化」「官民協調外債ファンド」などの文言を盛り込んだが、「建設国債の日銀引き受け」「3%の物価上昇目標で無制限の金融緩和」など、安倍氏が解散後に繰り返した「過激」発言を軌道修正。党内からも「お金が潤沢に供給されて回るなら、なぜこんなに景気がよくないのか」(石破茂幹事長)と安倍発言を疑問視する声が出る中で、「(物価上昇率は)3%がいいと思っているが、専門家に任せる」「(建設国債を)日銀が直接買うと言っていない」などと釈明に追われる場面もあった。それでも、「かつて政権にあった時代の金融政策とは次元の違う政策を実行していく」と力説し、デフレ脱却と経済成長の実現に意欲を示した。

解散表明した翌日以降、ほぼ連日株価上昇

   安倍氏の自信を支えるのが、この1週間の市場の反応。外国為替市場は選挙後22日の円相場が7カ月半ぶりに1ドル=82円台半ばまで下落し、株式市場の日経平均株価は22日、約6カ月半ぶりに9300円台を回復。野田首相が解散表明した翌日の15日以降、1日を除いて上昇し続け、値上がり幅は6日間合計で700円を超え、この間の上昇率も8%に達した。26日午前は、前日比99円高の9466円と、9400円台を回復した。

   金融緩和自体は与野党通じ、必要性でほぼ共通するが、論点は大きく、①インフレ目標と金融緩和手段、②日銀の独立性、③国債買い入れ――の3点。インフレ目標は日銀が「1%」を実質的に目標としていて、白川総裁はバブル期も物価上昇率は平均1.3%だったとして、高い目標は「現実的でなく悪影響が大きい」と反論している。緩和手法については民主党内の前原誠司経済財政相が外債購入を提唱したことがあるが、「国債などの買い入れ基金の拡充くらいしか当面は手がない」(エコノミスト)のが実情で、外債などまで広げるか、市場も議論の行方を注視している。

   日銀の独立性では、日本維新の会とみんなの党が共通政策で政府と日銀のアコード(政策協定)を打ち出し、「日銀法改正」と明記している。安倍氏と金融政策のブレーンが共通するとされ、この点では考え方は近く、民主党が「日銀の独立性」を強調して対立する構図だ。

国債引き受けについては民主党が猛批判を展開

   ただ、国債引き受けについては民主党が猛批判を展開する一方、渡辺喜美みんなの党代表も「まったく意味不明だ」と酷評。山口那津男公明党代表も「一定のルールを守る必要がある」と慎重姿勢を示し、さらに経済界からも「財政規律を緩めて資金をジャブジャブにするというのなら、市場に間違った捉え方をされる」(経済同友会の長谷川閑史代表幹事)と批判するなど、安倍氏は孤立した形。特に、自民党が国土強靭化基本法案を公約の筆頭に掲げ、従来から「10年間で200兆円」と打ち出していて、安倍氏が「建設国債」をわざわざ挙げて「引き受け」と語ったこともあって、「借金まみれで経済対策を打ち、それを日銀に引き受けさせるやり方はあってはならない」(野田首相)と、民主党に「安倍批判の突破口」(民主党議員)を与えた形で、考えが近いはずのみんなの党にも「金融政策と国土強靱(きょうじん)化をごちゃまぜにしている」(渡辺代表)と批判された。市場では「自身の発言で市場が円安・株高に動いたのに気分が高揚しすぎて、ちょっと勇み足だったのでは」(エコノミスト)との指摘が出ている。

   選挙戦の論争はまだ始まったばかりで、「成長力を高める政策を打ち出すのが政治の役割だが、これという有効策が簡単に見つからない」(金融市場関係者)という閉塞感は消えず、選挙後の政権がどんな枠組みになっても日銀への緩和圧力が増すのは間違いない。

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