成田国際空港会社が、航空会社から徴収する国際線の着陸料を2013年4月から平均5.5%引き下げる。料金の改定は、成田空港の民営化に伴う利益還元策として2005年10月に実施して以来7年半ぶりとなる。アジア各国の空港間競争は激化しており、日本の空港のネックともされる割高な料金を少しでも値下げして激戦に勝ち抜こうとの狙いだ。
成田空港の現行の着陸料は、騒音の大きさに応じてA~Fまで6段階にランク付けされ、1トン当たり1650~2100円に設定されている。新料金はランクにかかわらず一律同100円ずつ引き下げるもので、騒音が低いほど値下げ率が高くなる。
手荷物取り扱い施設の使用料も引き下げ
また、国際線の手荷物取り扱い施設の使用料も同時に現行より最大20%引き下げる。現在の料金体系は、航空機の座席数にかかわらず、101席以上で一律料金を課している。従来はジャンボジェット機など大型の航空機の乗り入れがほとんどで問題はなかったが、最近は小型機から中型機、大型機など航空機は多様化してニーズに合わなくなっており、座席数に応じて料金が異なるシステムに変更することとした。
成田空港がこうした料金改定に踏み切る背景には、航空会社が自由に空港を選ぶ「航空自由化(オープンスカイ)」時代に突入、競争力を高めなければアジアの空港間競争に勝ち残れないという危機感がある。アジア各国は経済成長の伸びに伴い、航空需要が拡大している中、各国の主要空港は航空会社に対するサービス競争を展開、韓国の仁川空港やシンガポールのチャンギ空港の着陸料などの空港使用料は現在、成田空港の半分程度とされている。
現状のままでは仁川やチャンギに差をつけられる
成田空港は、多用な国の航空機が乗り入れる国際線ネットワークが豊富な国際拠点空港を目指している。しかし現状のままでは仁川空港やチャンギ空港にその地位を奪われてじり貧になりかねず、何らかの手を打つ必要性に迫られていた。
手荷物取り扱い施設使用料の値下げは、今後需要増が見込まれる格安航空会社(LCC)対策という側面が強い。LCCは、徹底的なコスト削減で低運賃を実現するビジネスモデルで事業展開するが、101席以上一律料金は中・小型機の使用が一般的なLCCにとっては不利なシステムでコスト増につながっていた。このためLCC各社は「座席数が少なければ、使用料は低くするべき」と求めており、この要望が認められる形となった。
今回打ち出した着陸料と手荷物取り扱い施設使用料の引き下げで、成田空港は実質で年間約10億円の減収になると見込んでいる。成田空港の夏目誠社長は「減収分はコスト削減で吸収し、新規の需要を取り込みたい」と意欲を示すが、「もう一段の値下げが必要だ」(航空関係者)との声が早くも上がっている。値下げ後の着陸料だけ見ても、仁川空港やチャンギ空港には及ばないためで、成田空港にとってはまだまだ試練が続きそうだ。