5年後、米国が世界一の産油国に 薄れる「中東」への関心?

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   5年後の2017年までに、米国がサウジアラビアを抜いて世界最大の産油国になるとの見通しを、国際エネルギー機関(IEA)が明らかにした。

   IEAの「世界のエネルギー見通しに関する報告書」によると、米国は「シェールオイル」や「シェールガス」の生産を進め、2035年までには国内全体のエネルギー需要をすべて自給できるようになる。

米国、35年までに「ほとんどを自給できる」

   2012年11月12日に発表したIEAの報告書では、地下数千メートルにある固い岩盤層に閉じ込められている「シェールオイル」や「シェールガス」の生産量が急速に増えると指摘している。

   米国は現在、世界第3位の産油国だが、国内のエネルギー需要の約20%を輸入に依存している。しかし、こうしたオイルやガスを地中から取り出す技術を確立して商業生産に踏み切ったため、米国の石油生産量は2011年の日量810万バレルが15年までに1000万バレル程度に増加し、20年には1110万バレルに達するという。

   一方、サウジアラビアの生産量は2015年まで日量1090万バレル、20年は1060万バレルで推移。米国の原油生産量が17年までにサウジアラビアを抜いて世界最大となり、20年代半ばまで、その座を維持すると予測している。

   IEAは、原油生産量などの拡大とエネルギー効率の改善によって、米国は35年までに必要とするエネルギーのほとんどを自給できるようになるとみている。天然ガスの生産でも、米国は15年までにロシアを上回り、世界最大になると予測した。

   ただ、米国の石油生産量は2035年までには920万バレルに減少。サウジアラビアは35年までに1230万バレルに増加する見通しで、再び米国を逆転するとも予測している。

   米国が世界一の産油国になることについて、国際経済アナリストの小田切尚登氏は「中東への依存度を下げられる点では米国にとっていいニュース。ただ、それはシェールオイルやガスのコストが原油より安いことが前提です。米国内ではまだコストが高いという指摘もあり、活用に反対する声がないわけではありませんから、予測どおりになるとは限りません」と話す。

中東めぐり、日中は協力するしかない

   IEAは米国がエネルギーを自給できれば、「中東産原油は90%が日本や中国など、アジア向きになる」と指摘。さらに、「(米国は)原油やガスを産出する地域に関心を示さなくなって、今後の中東政策にも大きく影響してくる可能性がある」と分析している。

   そこで懸念されるのが、「ホルムズ海峡の封鎖」。もとはイランの核開発疑惑が発端だが、それに欧米が石油禁輸措置で対抗。さらにイランが反発して言い出した。12年1月に、イランが持ち出したのは記憶に新しいところだ。

   中東から日本に輸入される石油や天然ガス(LNG)は、必ずホルムズ海峡を通る。石油や天然ガスなどの化石エネルギー依存度が81%(09年、IEA調べ)にものぼる日本とって、この海峡の封鎖は「死活問題」で、米国の中東への関心が薄れるなか、万一イランがホルムズ海峡を封鎖したら、日本は単独で交渉にあたるしかなくなるかもしれない。

   前出の小田切氏は、「(シェールオイルなどを)米国は自分で使うので、日本に安く、しかも多く輸出することはないでしょう。ホルムズ海峡問題では、日中の利害関係は一致しています。万一の場合にはこの2つの輸入大国が協力していくほかありません」と話す。

「それこそ、尖閣問題で争っている場合ではなくなります」
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