日本維新の会が目玉候補のひとりと位置づける山田宏前杉並区長(54)が「国替え出馬」することになり、その理由について憶測が広がっている。山田氏は衆院議員時代から杉並区(東京8区)が地盤で、その後も3期11年にわたって区長を務めたことから、知名度は抜群のはずだ。
ところが、2012年12月16日の衆院選で出馬することになったのは東京19区(国立市・国分寺市・小平市・西東京市)から。前回09年衆院選で8区から当選したのは自民党の石原伸晃前幹事長(55)で、伸晃氏とバッティングするのを避けたとの見方が出ている。
「杉並区でと希望しておりましたが、党本部からの要請で東京第19区」
山田氏が出馬する選挙区は、2012年11月17日に発表された。この日は、1次公認候補として47人が発表されたのだが、山田氏の名前と選挙区が読み上げられると、会場からは「おおっ!」っと、どよめきの声があがった。
同日、山田氏はブログで
「私は、長年お世話になりました杉並区でと希望しておりましたが、党本部からの要請で東京第19区となり、特に杉並区民の皆様には本当に申し訳なく思っております」
とつづり、11月19日に都庁で開いた会見でも、
「中学や高校は国立で故郷」と話しながらも、「本来は杉並から出たかった」
とこぼした。国替えは、維新の方針だったことが分かる。では、その理由はどこにあるのか。09年の衆院選で東京8区から当選した石原伸晃氏をめぐる、2つの説が指摘されている。ひとつが、「親ばか」説。伸晃氏の父親は維新の会代表の石原慎太郎氏。維新の会が、「親ばか」として知られる慎太郎氏に配慮して、伸晃氏に「刺客」を送るのを避けたとの見方だ。
もうひとつは、「そもそも、勝負を避けた」との見方だ。自民党にとっては大逆風だった09年衆院選だが、伸晃氏は14万7514票を獲得して当選。社民党候補の保坂展人氏(現在は世田谷区長)は11万6723票獲得したものの、伸晃氏とは大きな差がついている。12年選挙では、民主党が候補者の擁立を検討しているものの発表には至っておらず、現時点で伸晃氏以外に出馬表明しているのは共産党新人の上保匡勇氏(28)のみ。上保氏は都内の候補者では最年少になる見通しで、山田氏が8区から出馬した場合、事実上の一騎打ちになる可能性もある。
これまでは「1勝1敗」
実は山田氏と伸晃氏は、国政選挙で少なくとも2回「直接対決」したことがある。
山田氏は1993年に日本新党から衆院選に出馬して初当選した際の選挙区は、中選挙区制の旧東京4区(渋谷区、中野区、杉並区)だった。山田氏はトップ当選を果たしたのに対して、伸晃氏は定数5に対して5位で「滑り込み当選」。だが、96年の選挙では山田氏は新進党から現在の東京8区を舞台に伸晃氏と対決し、敗れている。つまり、これまでは「1勝1敗」だ。そのため、09年の逆風の中で伸晃氏が次点に大差をつけて当選し、自民党の総裁選に出馬したことを考えると、山田氏の知名度をもってしても8区での勝利はおぼつかない、との見方だ。
なお、現時点で山田氏以外に19区への立候補を表明しているのは、民主党の末松義規氏(55)、自民党の松本洋平氏(39)、「国民の生活が第一」の渡辺浩一郎氏(68)、共産党の井手重美津子氏(48)。井手重氏以外の3人は国会議員経験者で、混戦は必至だ。