高橋洋一の民主党ウォッチ
野田首相の方が「世界の非常識」 安倍総裁「金融緩和」論は妥当だ

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ハイパーインフレと日銀の国債引受「関係ない」

   「無制限買入」について、安倍氏がいうのはインフレ目標を達成するまでの間、無制限買入という意味であって、インフレ目標を突破してまでも金融緩和するはずない。こうした表現は世界の標準的なものだ。なお、インフレ目標を設定している国ではハイパーインフレになっていない。

   「建設国債の日銀引受」について、安倍氏自身は市中買入の意味で発言しているので、ためにする議論だ。ただ、あえていえば、仮に建設国債の日銀引受であっても、財政法の観点からいえば問題ない程度だ。今(2012)年度の国債発行は174兆円であるが、そのうち建設国債は5兆円にすぎない。

   一方で、日銀引受が禁じ手であるというのは誤りで、今年度も借換債17兆円の日銀引受が行われている。借換債も建設国債を含む新発債も、条件は同じで市場では混在して取引されており、両者の区別はない。財政規律の観点から、今年度であれば日銀引受は30兆円の枠になっている。仮に建設国債5兆円を全額日銀引受としても、借換債17兆円と合わせ22兆円なので、財政規律の観点では何の問題もない。法改正なしで、若干予算修正すればできうる話だ。なお、中央銀行の国債引受について、ECB(欧州中央銀行)は禁止規定があるが、FRB(米連邦準備制度)、BOEは禁止規定がなく前例はあるが今やる必要はないというスタンスだ。中央銀行の国債引受は国際的に禁じ手という意見は危うい。

   日銀引受という過剰に反応するのがマスコミだ。「戦前の日銀国債引受から戦後ハイパーインフレ」との誤った連想からだ。戦前の日銀引受は1930年代前半だ。戦後のハイパーインフレとは10年以上の間があるし、30年代後半のインフレ率は高くない。戦争で生産設備が壊滅的な打撃を受け、モノ不足でハイパーインフレになった。ハイパーインフレと日銀の国債引受は関係ない。歴史は年代を入れて正しく理解すべきだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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