「がんワクチン」は患者の「希望」になるか 研究進むが、実用化は早くて数年先

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   がんの治療法として、外科的療法、放射線療法、化学療法に次ぐ「第4の治療法」が国内外の注目を集めている。

   「免疫療法」の一種である「がんワクチン」だ。国内でも研究が進み、製薬会社との協力のもと治験がおこなわれている。ただ、実用化されるのは早くて数年先のようだ。

国内製薬会社も治験に乗り出す

   一般に、がんの治療法として科学的なものとして認められているのは、外科的療法、放射線療法、化学療法の3種類だ。「標準治療」と呼ばれる。「免疫療法」は、このいずれにも属さないが、50年以上にわたって目立った成果がなかった。そうした中で、期待されているのが「がんワクチン療法」だ。2012年11月18日にNHKスペシャル「がんワクチン ~”夢の治療薬”への格闘~」として取り上げられたほか、12月には「がんワクチン治療革命」(講談社)というタイトルの本も刊行される。

   米FDA(食品医薬品局)が、2011年11月に治療薬として承認する際に満たすべき要件を明確にしたことで、科学的に実証可能な「第4の治療法」として認識されるようになった。海外では、英グラクソスミスクラインなどが、新薬としての承認に向けた治験に取り組んでいる。すでに一部の国で承認された例も少数だがある。

   日本でも、東京大学医科学研究所の中村祐輔・現シカゴ大医学部教授の研究室を中心に「がんペプチドワクチン」の研究が進められている。

   がん細胞だけが持つ特有の「ペプチド(アミノ酸の結合物)」を人工的に合成、大量に注射する。キラーT細胞(CTL)を活性化させ、がんを叩くという方法だ。基礎研究では、ワクチンに反応するCTLが増えている患者は、そうでない患者に比べて、生存期間が延長していることが確認されつつあるという。ペプチドは人工合成でき、週に1度の注射で、抗がん剤のような副作用も現状ではないとされていることから、「標準治療」の効果がなかった患者らの期待が集まっている。

   各大学でおこなわれた基礎研究にもとづき、国内の製薬会社も承認に向けた取り組みに乗り出した。2012年2月には、がんワクチンとしては国内ではじめて、すい臓がんの血管新生阻害の効果を期待したオンコセラピー・サイエンス社(中村教授の成果をもとに研究開発をおこなう大学発ベンチャー)の「OTS 102 エルパモチド」(すい臓A)の治験が最終段階まで終了。しかし、結果は「生存期間を延長することが統計学的に認められない」というものだった。

   ただ、これは一例で、塩野義製薬は3月に治療用ペプチドワクチンの適応範囲を拡大させるなど、取り組みを強化している。このほか、がんそのものを叩くすい臓用ワクチンBを筆頭に、肺がん、膀胱がん、前立腺がんなど、15の開発が進む。

製品化はできるとしても4年後

   ところでこのワクチン、いったいいつから一般人が使えるようになるのだろうか。

   新薬が製造されるまでのプロセスには、おおまかにいって基礎研究・治験・承認というステップがある。治験はさらに3段階にわけられて、ここで有効性を確認した上で厚労省に申請し、承認と言う形になる。すい臓Bの第3相試験(最終段階)は2012年に始まった。結果がでるのが2年後で、製品化は早くても4年後とされる。

   現状では自由診療を除き、ペプチドワクチンの利用は治験への参加にほぼ限られる。ただ、白血球の型があわないと効果を発揮しないため、事前に年齢や治療歴、血液等50項目に渡る条件をクリアしないと治験は受けられない。

   日本国内で効果が認められ、新薬として標準的な治療に取り入れられるのには、5年、10年と言う年月が必要なようだ。

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