南山大学などを運営する学校法人・南山学園は、デリバティブ(金融派生商品)取引の解約で総額229億円の損失が生じたと、2012年11月20日に発表した。
大学のデリバティブ損失は2008年秋のリーマン・ショック以降、駒澤、慶應、早稲田などが相次ぎ発覚。「まだあったのか」といった状況だ。
損失抱える大学「まだあります」
南山学園は2005年度からデリバティブ取引による資産運用を開始したが、その後のリーマン・ショックに伴う金融危機の影響で多額の含み損が発生。教育・研究活動に支障をきたさないことを大前提に「収束計画」を策定し、それに則り順次契約を解除してきた。
しかし、いまだに不透明な経済情勢が続くなか、早期にリスクを解消したほうがよいと判断し、計画を前倒しして、すべての契約解除に踏み切った。当初すべての解約が完了するのは17年度の予定だった。
同学園によると、総額229億円のうち160億円超の損失についてはすでに11年度までに処理。残る12年度分の約61億円については金融機関からの借り入れなどで捻出した。
とはいえ、229億円といえば、これまで「ダントツ」とされた慶応大学の225億円の損失を上回る。いったい、どのように処理したのだろう――。
同学園は「他の運用利益です。たとえば有価証券の売却益や運用益などを充ててきました」と説明。それを毎年着実に積み重ねたという。
文部科学省は、「南山大学は中長期的な観点から現時点で損を確定して、新たな計画に則って運営していったほうがよいと判断したと聞いています。これまでも(160億円超を)処理してきていますし、問題はありません」と話している。
同省は個別の大学から資産運用に関する相談を受け付けているが、「損失処理の仕方などは大学の判断になります」としている。
そのため、「含み損を抱えている大学はまだあります」ともいう。ただ、その数は把握していない。
金融機関を損害賠償で訴えたケースも
大学のデリバティブ損失は、大学側が取引していた金融機関を相手どって裁判に持ち込んでいるケースもある。
2007~08年にかけて154億円もの損失を招いた駒澤大学は、取引を勧誘したBNPパリバ証券やドイツ証券などに対して約170億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。大学側が、BNPパリバなどが金融商品取引法上の「適合性の原則」に反するとして、取引そのものが無効と主張している。12年5月に公判がはじまり、現在も係争中だ。
大阪産業大学は、デリバティブ取引の途中解約で不当に高額な解約金を支払わされたとして、野村証券に約13億円の損害賠償を求めた。運用に失敗した損失もあるが、金融機関との契約解除にかかる手数料が法外というのだ。
その訴訟で大阪地裁は、金商法に基づく説明義務違反と認定。野村証券に約2億5000万円の支払いを命じている。
南山学園のケースでも12年度の61億円の損失分のうち、59億円に金融機関との契約解除にかかった手数料が含まれている。ただ、同学園は「訴訟は検討しましたが、適切ではないと判断しました」と話している。