鳩山由紀夫元首相が民主党からの次期衆院選出馬を断念し、政界を引退する決意を野田佳彦首相に伝えた。
一度は「首相をやめた後は総選挙に出ない」と明言しておきながら、すぐに撤回した経緯があるだけにインターネット上では「まだ分からない」「どうせ嘘」と疑う声が多く上がっている。
「またトラストミーか」とあきれる声
鳩山氏の衆院選不出馬のニュースが流れたのは、2012年11月20日の夜。本人が民主党幹部や後援会に伝えたというが、自宅前で待ち構えていた報道陣に対しては引退を明らかにせず、「明日、野田首相と直接会ってから話をする。私は民主党に心から愛着を持っている」と述べるにとどまった。
野田首相は消費増税の推進、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加に積極的だが、鳩山氏はいずれにも反対の立場だ。2012年6月には消費増税法案の衆院採決で反対票を投じ、党員資格停止3か月の処分を受けている。12月の衆院選にあたって民主党では、候補者に「公認申請書」への署名を求めているという。そこには「党議を踏まえて活動する」と明記されており、党の公認を受けるには消費増税やTPP参加に賛成しなければならない。鳩山氏が自らの「信念」を曲げて署名するかどうかが、注目されていた。
21日朝に放映された情報番組では、鳩山氏の政界引退について道行く人に感想を聞いていた。選挙区のある北海道では「残念」という声があった半面、「(票を)入れるつもりはなかった」「当然。世代交代が必要」と冷やかな反応が多かった。
ネット掲示板を見ると、鳩山氏に対する不信感が根強い。特に首相辞任直後の2010年6月の会見で、「総理たるもの、その影響力をその後行使し過ぎてはいけない。したがって次の総選挙には出馬しません」と断言したにもかかわらず、早々と撤回した経緯があるだけに、今回もその発言を額面通りに受け取れないというわけだ。「またトラストミーか!」とあきれる人、「引退といっても復活することもあるからな」と先読みする人、さらに「また兄弟で新党結成」「都知事選(出馬)か」と転身を予想する人まで現れた。
弟邦夫氏は「全然聞いていない」
鳩山氏は2009年11月に、自らの資金管理団体を巡る偽装献金問題が発覚。実母から約11億円もの巨額の資金を提供されていたことが分かり、謝罪に追い込まれた。最終的に検察審査会で「不起訴相当」とされたものの、鳩山氏への信頼は大きく揺らいだ。
さらに、「最低でも県外」と公言していた沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題では、対応が迷走に迷走を重ねた。移設先に「腹案がある」と言い、米国のオバマ大統領にも「トラストミー」と普天間問題解決を約束しながら、これを裏切った形となり、最後は退陣に追い込まれた。加えて、首相辞任後の議員引退を示唆しながら発言撤回――。正式に引退宣言をしても「信用できない」と受け止められるのは、過去3年間で重ねてきたこれらの「ウソ」が原因だろうか。
実弟の鳩山邦夫元総務相は読売新聞の取材に、「全然聞いていない。選挙戦の見通しは厳しく、状況を見極めたということではないか」と話している。
鳩山氏は21日午後に野田首相と党本部で会談。その後、野田首相は報道陣に対して、鳩山氏から「今回の衆院選には立候補をしないと決断した。そして政界を引退し、第三の人生を歩みたい」と告げられたと述べた。「引退後」がどうなるか、ネット掲示板では「テレビに出まくる予感」「頼むからもう隠居して」と突き放した意見が多い。「前回は後援会の声にこたえて引退を撤回したからあながち…」「まさか参院選に出るつもりでは」と、どうしても引退宣言を信用できない人も見られる。