自転車に乗ってバイクと接触事故を起こし、バイク側が負傷したのに現場から逃走してしまった無職の男(61)が2012年11月20日、奈良県警から自動車運転免許の停止処分を受けた。
免許が必要ではない自転車の事故で、自動車運転免許が停止処分となるのは奈良県では初めて。全国的にも珍しく、「この処分って合法なの?」「これってアリなの?」などネット上には驚きの声が相次いでいる。
免許停止期間は150日
報道によると、運転免許の停止処分を受けた奈良市在住の男は、12年5月10日夜、市内の市道を自転車で急に斜め横断しようとしたため、後続のバイクと接触。バイクの男性(37)は大きく転倒して鎖骨を折る重傷を負ったが、自転車の男はその場から立ち去ったという。
男はひき逃げした理由を「自転車との接触だから大したことはないと思った」と供述し、県警は事故から5か月後の10月に自転車の男を道路交通法違反(救護義務違反)で書類送検した。
こうした事故捜査の結果を受け、行政処分を担う県警運転免許課は「本件は道交法の救護義務違反(ひき逃げ)という悪質な事案。最大180日に次いで2番目に長い150日の免許停止処分に踏み切った」と言う。
道交法では自転車は軽車両に該当し事故の際には救護義務が課される以上、道交法違反での書類送検は理解できる。だが、自転車の過失事故によって、同じ人物の自動車免許が停止となるのは、どのような法律に基づくものなのか。
道交法の免許停止規定には病気や重大な違反などがあるが、県警運転免許課はJ-CASTニュースの取材に対し
「今回の免停処分は道交法の103条第1項8号が根拠になっています」
と話す。
県警「自動車でも違反を犯す恐れが高い」
道交法103条第1項8号は、免許停止処分の事例として
「前各号に掲げるもののほか、免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき」
となっている。
同課は
「自転車でこのような道交法違反をした人物が自動車免許も所持している以上、同じような違反を犯す恐れは高いとみて処分せざるを得ない」
と指摘する。自転車でもルールを守らずに事故を起こした場合、職業運転手などは仕事を失う恐れさえあるということなのだ。
150日もの免許停止を受けた男は処分に抗議することもなく、「大変申し訳ないことをした」と話しているという。ちなみに自転車運転については免許がない以上、「こちらが自転車に乗るなとは言えない」(運転免許課)とのことだ。
自転車運転による道交法違反で自動車運転の免許停止になるケースは全国でも数少なく、札幌で2005年に自転車が脚立に衝突して乗っていた男性を死亡させ逮捕された男のほか、2011年5月に大阪で国道を自転車で横断して2人死亡の交通事故を誘発し、実刑判決を受けた男に続いて今回が全国3例目と見られる。