現代のジャン・バルジャン? コンビニ「パン強盗」、44歳男に同情の声

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   大阪府警は2012年11月19日、コンビニで現金とパンを奪ったとして、強盗の現行犯で大阪市住之江区在住のアルバイトの男(44)を逮捕した。男は犯行後、奪ったパンを店先でほおばり、3個目を食べている最中に通報を受けた警察官に身柄を押さえられた。

   逃げることより飢えをしのぐことを優先させた男の行為に対し、ネットユーザーも同情の声を寄せ、フランスの小説「レ・ミゼラブル(ああ無情)」の主人公になぞらえて「まるでジャン・バルジャン」という書き込みもあった。

「なんか悲しいニュースだ」

   産経新聞によると、男は19日午前2時45分ごろ、大阪市住之江区内のコンビニに押し入り、男性店員(51)にナイフを見せて「金を出せ」と脅迫。パンを含む食料品6品(約700円相当)と男性店員が差し出した現金3万3000円を奪ったという。

   「とにかく腹が減って食べることしか考えていなかった」ため、男は店を出るとすぐさま夢中でパンを食べ始め、久方ぶりの食事のさなかに「御用」となった。府警の調べには「1か月くらい前から仕事がなく、最近全然食べていなかった」と話しているという。

   雇用問題や経済格差など日本の現状をあぶりだすかのような事件の概要がネット上にアップされると、犯罪自体は否定しつつも、身につまされたユーザーからは多彩な意見が相次いだ。

   最も多かったのは

「やるせない。なんか悲しいニュースだ」
「日本は変わってしまった」

   といった嘆きのコメントで、逃亡を後回しにしてパンにむしゃぶりついた男の行動をめぐっては

「急に寒くなったし、刑務所に入りたかったんだろな」「捕まるのが目的だったのでは」「パン3つ目って食いすぎだろ。2個目でやめて逃げてれば」

   などの感想が目立った。

   脅す側、脅される側の職業に注目したユーザーからは

「脅したのが44歳時のアルバイトなら、脅されたほうも51歳のアルバイト店員。グローバル化で豊かになった(笑) 労働の流動化で豊かになった(笑)」

   と新自由主義経済を皮肉るようなコメントが寄せられた。

「ナマポに頼らずアルバイト」評価も

   厚生労働省の人口動態統計では2011年の日本の餓死者は2053人で1997年と比べて1・6倍、1997年から2011年までの15年間のトータルの餓死者は2万5500人以上――というデータもネットの掲示板に示され、

「何日食べてなかったんだ。人間追い詰められたら盗みもやるだろう」「飢え死にするよりは盗みを選ぶだろ」

   と同情する声も少なくなかった。

   また、大阪市内の生活保護受給者は市として全国最多の15万人超に達し、受給率は5・63%(全国平均1・57%)にもかかわらず、逮捕された同市在住の男が生活保護を受けていないことを評価し、

「ナマポに頼らずアルバイトなんて大阪では珍しい話だな」

   という意見に対して、

「生活保護申請を役所に渋られた末の犯行では」

   との見方もあった。

   一方、今回の事件を知って、一切れのパンを盗んだ罪で何年も投獄された後、聖職者と出会って新たな人生に踏み出すジャン・バルジャンの生涯を描いたヴィクトル・ユーゴーの小説「レ・ミゼラブル」を思い起こしたユーザーも。

「(逮捕された男は)のちのジャン・バルジャンである」
「平成のジャン・バルジャン」

   といった書き込みも見られた。

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