「前田敦子はキリストを超えた ─〈宗教〉としてのAKB48」―こんなタイトルの新書が、2012年12月7日に発売される。
センセーショナルなタイトルだけあって、発売前からインターネット上で話題に。批判の声も多く上がっている。
「キリスト教信者でなくても、このタイトルには強い不遜を感じる」
「前田敦子はキリストを超えた ─〈宗教〉としてのAKB48」は社会学者でAKB48の熱心なファンでもある濱野智史さんの著書で、筑摩書房から出版される。Amazon.co.jpの商品ページを見ると、表紙には「『私のことは嫌いでも、AKBのことは嫌いにならないでください。』この言葉に充溢するあっちゃんの『利他性』こそが、前田敦子がキリストを超えたアルファにしてオメガのポイントである。それはキリストの『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』に匹敵する、自らを犠牲にする者の利他性に満ちた言葉である」と書かれている。各章は「序章 AKB48は『いま・ここ』にある宗教である」「第一章 前田敦子はキリストを超えた」「第四章 AKBは世界宗教たりえるか」など、タイトルに劣らぬ衝撃的な見出しが付いている。
濱野さんは11月13日、ツイッターで「挑発的なタイトルだと受け取られると思います。ただ、あとがきでもふれていますが、本書にはキリスト教自体を批判する意図はありません。それは本書を読んでもらえれば分かると思います。とにかく、本当に渾身のマジ論考ですので、ぜひ読んで欲しいと思います」と著書をアピールしている。
しかし濱野さんあてには「タイトル狂ってますよ。冗談じゃなく。あなたは基督教徒じゃないんですよね?余計悪いでしょう」「アイドル(偶像)がキリストを超えたと言ってる時点で、怒られることぐらいは覚悟してください」など非難のツイートが寄せられた。
さらに、雑誌「ダ・ヴィンチ」の創刊編集長で小説家の長薗安浩さんは「タイトルを見て、あきれた。キリスト教信者でなくても、このタイトルには強い不遜を感じる。キリストを各宗派の教祖にかえれば、その是非はすぐわかるだろうに。著者と版元は批判覚悟とは思うが、前田さんはいい迷惑だ」、評論家の東浩紀さんは「キリスト教をなんだと思っているのだ」「キリスト教信者でなくとも、常識あるひとなら納得いかないでしょう」と、著名人もツイッターで批判している。
巣鴨聖泉キリスト教会の主任牧師である小嶋崇さんは「なぜキリストが引き合いに出されるのか。なぜ『キリストを超えた』という分析になるのか」、キリスト教出版社「あめんどう」代表の小渕春夫さんも「恥ずかしい、笑い話ですね。欧米ではあり得ない。一目を惹くためにここまで言う広告人」とツイートするなど、キリスト教関係者からも疑問、非難の声が上がっている。
元はエイプリルフールのジョークだった
かつて、故ジョン・レノンさんがインタビューで「ビートルズは今やイエスよりも人気がある」と発言したことがある。これが世界的に問題となり、ジョンさんが謝罪に追い込まれたという「騒動」があった。
こうした前例もあり、もし「前田敦子はキリストを超えた」が海外の熱心なキリスト教徒の目に触れたら、大騒動になりかねない。なぜ、こうしたタイトルが付けられたのだろうか。
筑摩書房によると、元々濱野さんと親しい評論家の宇野常寛さんが、12年4月1日、エイプリルフールのネタとして「濱野智史待望の新刊(4年ぶりの単著)が、ついに発売です。帯、書いています。よろしくです!」と、「前田敦子はキリストを超えた」というタイトルの本の画像をツイートしたことが発端となっているという。
ただ、濱野さんは本気で「前田敦子はキリストを超えた」と思っていたので、ならば本当にこのタイトルで本を書いてやろう、と考え、今回の出版に至ったとのことだ。著者、編集者ともに内容には自信を持っている、と話していた。
濱野さんは批判を受けた後、ツイッターで「タイトルだけではそう思われても仕方がない思うのですが、内容をぜひ読んでほしいです。必然性があってのタイトルです。もちろん悩みましたが」と投稿している。