虫歯予防の有力な手段として、学童が学校でフッソ水でうがいをするフッ素洗口が全国的に広がり、2012年3月では89万人に達した。小学校では1970年に始めた新潟県が長く日本一を保ってきたが、2008年以降は佐賀県がトップになっている。2012年10月28日、私は同県鳥栖市で開かれた公開の健康講座に参加し、初めてそのことを知って驚いた。
厚生省もガイドラインつくって推進
発表したのは佐賀県のアドバイザー役も担ってきた境脩・福岡歯科大学名誉教授 (予防歯科学) 。同県の小学校は1999年頃にスタートしたが年々増え、2007年には137校36219人と児童の過半数を超え、2011年には166校45449人になった。これは児童数の96%にあたる。
一方、12歳児の一人平均虫歯数は、2006年度は1.7本で47都道府県の29位だったが、2010年度は1.0本で、9位。1位の新潟県は0.8本だった。境さんは「新潟県の洗口率は80%で止まっており、数年以内に佐賀県が全国一になる」との見通しを語った。これは結果的にフッ素洗口の効果を示す証拠になる。
フッ素は海水に1.3ppm、地中には240ppmも含まれている元素。水に含まれる濃度は各地で異なるが、米国のデータから1ppm前後の濃度だと、虫歯を防ぎ、かつ副作用がないとフッソ洗口推進派の人たちは主張する。
境さんは欧米諸国が水道にフッ素を入れていることから、日本でも水道にフッ素添加を求める運動を展開、新潟大学助教授時代に、それまでの代替手段としてフッソ洗口を導入した。厚生労働省は2003年に「フッ化物洗口ガイドライン」を都道府県に送って実施を奨励してからは急速に広がっている。
一方でフッ素に対する反対運動も根強い。2011年2月、日本弁護士連合会はフッ素の有効性、安全性に疑問があるとして「集団フッ素洗口・塗布の中止を求める意見書」を発表した。新聞やテレビが報道し、日本学校歯科医会、日本歯科医師会、日本口腔衛生学会などが反論する見解を発表した。境さんは「弁護士連合会の見解には多くの誤りがある。フッ素の安全性、有効性は世界保健機関 (WHO)を始め、世界の150もの学会や専門機関が保証している」と強調した。
(医療ジャーナリスト・田辺功)