アメリカの3大ネットワークの一つ、CBSがニュースサイトで「初音ミクは世界で最も偽者のポップスターだ(Hatsune Miku The world's fakest pop star)」という記事を掲載したところ、「ミクは偽者じゃない!」「CBSは世界中を怒らせた」「この記事を書いた記者を殺す」などといった批判とCBSに謝罪を求める書き込みが殺到し、記事のコメント欄が「炎上」している。
「ミクの荒涼とした非現実でもファンには嫌がられていない」
問題の記事は「CBS News」2012年11月9日付に掲載された。内容はミクのコンサートについて書かれたもので、
「ミクはポップスターの中では特殊な存在で、薬物やアルコールをやらないし、明け方にナイトクラブから出て転ぶのを撮影される心配も無い。しかも、コンサート会場の外で見かけることもない。なぜなら、ポップスターの偽者(fakest)の一種で、ホログラムだからだ」
と書いている。
記事はそのあとミクの生い立ちについて説明し、
「ミクの荒涼とした非現実は、彼女のファンに全く嫌がられることはないようです」
とし、「ユーチューブ」にアップされているコンサートを表示。ミクがステージに現れたときに叫ぶ何千人ものファンの姿は、死んでしまった有名スターの過去の映像が、舞台に映し出された時と同じような反応だ、などと結んでいる。
この記事にファンは激怒し、13日までにコメント欄に抗議のコメントが約120も書き込まれた。英語で書かれた長文のものが多く、特に「fakest」の文字と、記者の勉強不足に怒っているようだ。そこには、
「彼女はどのポップスターよりもリアルです。また、彼女は、プログラム、本物の楽器です。どの愚か者がこのジャンク記事を書いたのですか?本当のバカです」
「事情を知らずミクのコンサートを見たら卒倒する」という意見も
また、
「CBSは正式に世界全体を怒らせました。彼女の音楽はアメリカのポップスターの音楽よりも優れている。子供のためずっといい影響を与えている」
「『偽』は軽蔑的な言葉だ。グローバルなファンを侮辱しないでください。世界中の膨大な数の人々を怒らせたとして、記事の削除を求めます」
などがあり、中には記者は殺害されても仕方ない、という物騒なものまである。
この記事について日本のネットでは、「virtual」という言葉があるのに「fakest」を使った意味が分からない、と感じている人が多い。また、
「ミクが歩んできた独特な成長過程を知らずにいきなりこのコンサートを見たら、卒倒したり、世紀末を感じる人がいてもおかしくない」
といった感想を述べる人もいる。
初音ミクはもともと合成音声技術を用いたパソコン用ソフトで、歌詞と音符を打ち込めばまるで人間が歌っているように表現できる。パッケージに描かれた可愛らしいイラストと、ミクの「歌声」が大人気となり「ニコニコ動画」を中心に大ブレーク。ミクのイラストやCG動画の投稿も相次ぐなどバーチャルアイドルとして成長していった。
楽曲もCD化され大ヒット。セガの手によりゲーム化と、ステージ公演できる「3次元化」もされ、09年からライブ活動も行っている。11年7月にはアメリカ、12年10月には香港と台湾で単独ライブが行われ世界の舞台へと進出した。台湾のライブでは5000席がソールドアウトの大盛況となった。CMにも登場し、日本ではグーグル、アメリカでは11年にトヨタが起用している。