子どもから大人まで大人気の「ネコ型ロボット」ドラえもん。これまで、動力は体内の「原子ろ」で作られているとされていた。
その「原子ろ」が、最近発売されたコミックスで「なかったことになっている」のだ。震災に配慮したもののようだが、インターネット上では「やりすぎ!」との声も上がっている。
「決定版大事典」では「原子胃ぶくろ」と説明
2012年11月1日、ウェブサイト「東京福袋」主宰者の吉野忍さんが、ツイッターでこんな投稿をした。
「息子が発見。ドラえもん大事典から『原子ろ』『原子力』の文字が消えた」
「ドラえもん大事典」とはドラえもんの体の構造などを解説したものだが、胃袋について、従来「原子ろ 何を食べても原子力エネルギーになる」と説明されていた。しかし吉野さんがツイートに添付した画像のイラストでは、「原子ろ」「原子力」の表記がきれいに消されていたのだ。
このイラストが掲載されている「ドラえもん 未来の国からはるばると編」(12年8月発行)を入手して確認してみると、確かに胃袋の説明箇所は「何を食べてもエネルギーになる」としか書かれていない。「原子ろ」「原子力」と書かれるはずだった部分は空白になっている。
なお、01年発行の「決定版 ドラえもん大事典」では、「ドラえもんの胃ぶくろは、原子胃ぶくろ。食べたものは、そこで分解。高性能エネルギー炉に送りこまれ、完全に消化・吸収して、エネルギーにしてしまうのだ」と説明されている。「食べたものを原子まで分解してエネルギーにする」ということで、原発のように核分裂でエネルギーを発生させているわけではない。
「東日本大震災の被災状況を踏まえ、再編集した」
吉野さんのツイートがきっかけで、「原子ろ」「原子力」表記が消えたことがインターネット上で話題になった。「過剰反応しすぎ…」「これは消さなくていいだろ…」「どんだけ原子力アレルギーなんだよ」と「やりすぎだ」という意見が多く投稿されている。
表記を消した理由について、小学館 児童・学習編集局「ドラえもんルーム」に問い合わせたところ、「多くの子どもたちに『ドラえもん』を楽しく読んでもらうために、作品世界を壊さずに、言葉を選んできました。東日本大震災の被災状況を踏まえ、再編集いたしました」との返答があった。今後も「原子ろ」「原子力」表記は消されたままになってしまうのか、と聞くと「今は分からない」とのことだった。