(ゆいっこ花巻;増子義久)
虎が宙に舞い、地べたを這うたびに拍手の輪が広がった…。東日本大震災から1年8ヵ月となる11日、花巻市内のかけはし交流産直「結海(ゆうみ)」に秋田県五城目町と岩手県大槌町、それに地元・花巻市の住民などが集い、郷土芸能を鑑賞しながら犠牲者の冥福と一日も早い復興を祈願した。
震災当日、大槌町の観光ホテルに宿泊していた五城目町の老人クラブの一行はホテル従業員の決死の救助活動で全員が無事に救出された。これが縁となって日本海と太平洋を結ぶ交流が始まり、今年5月に中間点の花巻市に「結海」がオ-プン。月命日の11日には様々な交流イベントが続けられてきた。
この日は大槌町の郷土芸能である虎舞と五城目町のスコップ三味線、それに地元の鹿(しし)踊り、花巻シニア大学の創作ダンスなど盛りだくさんのプログラム。勇壮な虎舞が始まると、取り囲むようにしていた大槌町出身の被災者から割れるような拍手と歓声がわき起こった。
「我が家でも2頭の虎を買っていたが、津波で流されてしまった。これを見ると体全体の血が騒ぐの」。大槌町から花巻市に避難している佐藤美津さん(74) はハンカチで目頭を押さえながら身を乗り出した。現在、花巻市には沿岸被災地や福島県などから259世帯(517人)が避難しているが、うち大槌町が102世帯(221人)と圧倒的に多い。
この夏、花巻市内で一人暮らしをしていた大槌町出身の男性(49)が「孤独死」(病死)しているのが発見された。着のみ着のままで故郷を追われ、今また異郷の地で暮らす被災者の間には長引く避難生活で孤立感と望郷の念が強まりつつある。「結海」で働いている同じ大槌出身の平野菊枝さん(62)がぽつりとつぶやいた。「そりゃ、やっぱり故郷に戻りたいけど、何時になることやら。虎舞を見るともうだめ。身震いしちゃって…」
ゆいっこ
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