財団法人・大阪府交通安全協会は2013年度、大阪府警から約40年間委託されてきた運転免許更新時講習を、神戸市の民間業者と交代せざるを得ない事態となった。
競争入札で完敗したことが原因で、更新時講習の全受講生を民間業者が請け負うのは全国初のケース。小泉改革以来の「官から民へ」の流れの中で、協会は府警OBら更新時講習にかかわる職員のリストラに迫られることになる。
協会入札額と民間とは大きな開きが
大阪府警によると、更新時講習の対象者は約110万人で、2013年度講習をめぐる一般競争入札は12年8月27、28日に行われた。府内を五つのブロックに分けて地区ごとに入札を実施し、協会と神戸のコンサルタント会社A社など3者が参加した。
ただ、協会とA社以外の残る1者については、5ブロックすべてで予定価格以上の金額を提示したことから、入札は実態としてA社と協会の争いとなった。その結果、5ブロックすべてを神戸のA社が大差で落札した。
A社と協会が提示した各ブロックの入札価格と予定価格の割合を比較すると、①大淀ブロック(A社89・9% 協会99・8%)②大正ブロック(A社85・0% 協会99・8%)③西淀川ブロック(A社70・0% 協会99・8%)④門真ブロック(A社94・9% 協会99・8%)⑤光明池ブロック(A社95・0% 協会99・8%)。5ブロックの入札額の総計では、A社の約4億8000万円に対して、協会は約5億4000万円と大きな開きがあった。
協会などによると、更新時講習がスタートした1972年度から2011年度まで、協会は随意契約で府警から事業を委託されてきた。近年の委託料は年7~8億円だったという。
そうした中、2004年の政府の規制改革会議による提案や、翌05年の警察庁方針、さらには2010年の行政刷新会議の提言を受け、大阪府は11年に実施した12年度講習委託事業の入札から一般競争入札を導入。だが、11年の更新時講習の入札参加は協会のみだったため、予定価格に対する落札価格の割合は99%超で、実質的な競争入札は今回が初めてだった。
職員約500人のうち府警OBは210人を占める
大阪府交通安全協会などによると、職員約500人のうち府警OBは210人を占める。500人のうち更新時講習に関係する職員は200人に上り、その過半数は府警OBだという。
また、協会の収入全体の3分の1は更新時講習の委託料に支えられており、その収入が来年度はゼロになることから、府警OBを中心に大量リストラは避けられない情勢とみられる。 入札結果を受けて、職員のリストラは必至だ。
「職員みんな、不安でしょうね。だから今は何も話せない」。J―CASTニュースの取材に対し、協会の広報担当者は言葉少なだった。13年度も違反者講習や安全運転管理者講習などは請け負うものの、更新時講習の収入は穴埋めできない。担当者は「リストラを含めて13年度以降のことは、まだ何も決まっていない」とし、次の更新時講習入札に雪辱を期すのか、との問いにも「何も決まっていない」と繰り返した。
一方、協会側のショックとは裏腹に、ネット上では大阪府の更新時講習の入札結果について「大阪府、グッド・ジョブ。税金節約できた」「これは朗報だろ。既得権はなくさないとな」「この種の天下り法人には、埋蔵金たっぷりあるんだろ」といった歓迎の書き込みが相次いでいる。