日曜日(11月4日)にいわき市立草野心平記念文学館で第35回吉野せい賞表彰式が行われた。今年、記念講演をしたのはノンフィクション作家の柳田邦男さん(=写真)。「いのちの危機と言葉の力」と題して話した。
柳田さんは、災害・事故・公害・病気など、現代人が直面する命や心の危機について、半世紀にわたり取材・研究を続け、数多くのドキュメンタリー作品や評論を書き続けている、とチラシのプロフィールにあった。いのちの奥深いところから発せられる言葉に耳を傾けられる稀有なジャーナリストだ。
東日本大震災、原発事故、終末医療などを取り上げながら、「生きなおす力」のもとになるものを何点かあげた。「家族の愛」「専門家のサポート」「仕事に就く」「地域活動・社会活動をする」ほかに、「支える言葉との出会い」「表現する―書く・読む・描く・身体行動」「傾聴者に語る」ことも生きなおす力を生む。
日記がいい例だが、もやもやとした心に言葉を与えることで見えてくるものがある。柳田さんは書くことの過程を次のように説明する。心のカオス→表現する(脈絡をつける)→物語化への扉を開ける→自分を客観的に見る→納得感。たとえば、闘病記。闘病記は、死の受容への道筋としての自分史への旅、自分が生きたことの証の確認、だという。
なかでも「詩の達人は庶民の中にいる」「小さな言葉、小さな行為が人生の文脈のなかで大きな意味を持つことが少なくない」という言葉が印象的だった。地域の片隅で発せられるジイサン・バアサンの言葉に、それを実感するときがある。
(タカじい)
タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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