軽のプレミアムカーめざす
これらの歴史的経緯を踏まえて、一連のNシリーズを眺めてみよう。昨年末に登場したN BOXは、ホンダがフィット以来、得意とする「センタータンクレイアウト」を採用。ガソリンタンクを通常のリアシート下ではなく、フロントシート下に収めることで、広大なスペースと車両の安定性を確保した。N BOXはライバルのスズキワゴンRなどを抜き、軽の販売台数で今年4月から5カ月連続でトップとなるなど、久々のヒット作となった。
N-ONEもセンタータンクレイアウトを採用し、ホンダのいう「M・M(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)思想=人のためのスペースは最大に、メカニズムは最小にという設計」を踏襲している。だが、一見してわかるように、N-ONEは今日の軽としてロングノーズで、N BOXやライバルと比べると多少のスペースユーティリティーは敢えて犠牲にしている。
その分、N-ONEはホンダらしくDOHCターボエンジンを全グレードに設定するなど、走りを重視していることがわかる。FFと4WDも選択できる。ホンダは「軽量と高剛性を両立したボディと専用サスペンションの採用で、高速道路でも安定した走行性能と優れた静粛性、低燃費を実現した」と説明。「クラストップレベルの高出力、高トルクで、1.3リッタークラス並みの走りを実現した」という。
ただし、JC08モードの燃費は、ノーマルエンジンでリッター当たり27.0キロ。モデルチェンジしたばかりの新型ワゴンRの28.8キロには及ばない。ホンダはVSA(車両挙動安定化制御システム)を全グレードに標準装備。側面衝突時に頭部への衝撃を緩和するサイドカーテンエアバッグシステムを設定するなど、安全性能を強化しているのも特徴だ。
総じて、N-ONEは多少のスペースや燃費は犠牲にしても、走りや安全装備でライバルよりも上質な「軽のプレミアムカー」を目指していることがわかる。でも、残念なから、かつてのN360ほどホンダらしい革新性を感じられないと嘆くのは、オールドファンの無い物ねだりだろうか。