ホンダがヒット作「N BOX(エヌボックス)」「N BOX+(エヌボックスプラス)」に次ぐ新型軽自動車「N」シリーズの第3弾として、「N-ONE(エヌワン)」を発売し、反響を呼んでいる。N-ONEは、ホンダの往年の名車「N360」をモチーフにしたスタイリングが最大の特徴だ。
当時を知るドライバーにとっては、かつてのN360のイメージを忠実に再現したフロントマスクに、まず驚くだろう。果たしてN-ONEはスタイリングだけでなく、かつてのN360ほどの革新性をもったクルマなのだろうか。
大ヒット作を思い起こさせる
往年の名車を現代の最新技術で復刻させ、ヒットした先例としては、フィアット500が記憶に新しい。フィアット500は1957年にデビューした2代目(チンクェチェント)が人気で、1977年に生産終了したが、2007年に3代目となる現行モデルが登場した。
ホンダにとって、N360のリバイバルといえるN-ONEは、特別の意味をもつに違いない。1967年にデビューしたN360は、2輪車メーカーから本格4輪車メーカーにステップアップしようとしていたホンダが、その技術力と商品企画力で初めて勝ち取ったヒット作なのだ。当時、軽乗用車の王者として長く君臨していたスバル360を凌駕し、軽のトップセラーとして世代交代を図った。
N360はホンダらしく革新的な技術を満載していた。当時の軽では珍しかった4サイクル2気筒OHCエンジンをフロントに横置きするFF(フロントエンジン・フロントドライブ=前輪駆動)車で、室内は広く、標準仕様は31馬力、スポーツモデル(Tシリーズ)は36馬力の高出力を誇った。
当時、日本でFF車を量産できる技術力のあるメーカーはスバルとホンダしかなかった。英国ミニのレイアウトに習ったエンジン横置きのFF車は、21世紀の今もクルマのレイアウトとしてスタンダードになっている。日本でこの技術を最初に確立したのはホンダであり、後のシビックの大ヒットへと続く。