「インターネット依存症」日本国内に270万人 脳が退化、「妄想や幻覚を見る」は本当か

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   テレビのバラエティー番組で、いわゆる「インターネット中毒」が取り上げられた。四六時中ネットを利用していると「脳が退化」し、果ては「妄想や幻覚を見る」とまで話が発展したが、本当だろうか。

   実際にインターネット依存症を扱う病院が国内にはある。しかし治療を始めたのは最近で症例の蓄積が少なく、具体的な解明はこれからだ。

精神疾患かどうか結論は出ていない

日本のみならず隣国でも「ネット中毒」が深刻に
日本のみならず隣国でも「ネット中毒」が深刻に

   「ネット中毒」に焦点を当てたのは、2012年11月7日放送の「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)に出演した教育評論家の尾木直樹氏だ。「コンピューターを使い過ぎると脳が退化する」と口火を切ると、情報を容易に探し出せるネットに頼り過ぎれば、自分の脳で考えなくなると述べた。

   これに脳科学者の澤口俊之氏が続いた。ネットの使い過ぎが原因による「Internet Addiction Disorder」(IAD=インターネット依存症)では、重度の症状になると妄想や幻覚が見えるという。攻撃性が増して社会性が失われ、「覚せい剤中毒とほぼ同じ。そうなったら隔離しないとダメ」と刺激的な話も飛び出した。1日ネットに触れなかった際にイライラや不眠が増したら、「中毒」の初期段階らしい。

   国内には、IADの治療を専門に手がける医療機関がある。神奈川県にある久里浜医療センターだ。国立病院機構に属し、1963年に日本初のアルコール依存症専門病棟を設立、世界保健機関(WHO)からも指定を受けている。2011年7月に国内第1号となるネット依存治療研究部門を立ち上げた。

   IADは1997年、米国の精神科医イヴァン・ゴールドバーグ氏が理論づけた障害だ。多くの研究者が定義付けを試みているが、現時点では確立されたものはなく、精神疾患であるかどうかも結論は出ていない。研究者のひとりで米セント・ボナベンチャー大学のキンバリー・ヤング教授は、ネットに過度に没入するあまり、パソコンやモバイル機器を利用できないといらだったり、人間関係に煩わしさを感じたりするようになるのが特徴だと説明する。久里浜医療センターの2007年の調査では、国内でIADが疑われる20歳以上の人は約270万人と推計されている。未成年者はこの数字を上回る可能性が高い。

   同センターが公開している資料を見ると、訪れる患者の年齢層は10~50代とさまざまで、若年層はオンラインゲームにはまり込むほか、交流サイト(SNS)や動画サイトなどに没頭するケースが多い。食事や睡眠がおろそかになり、不登校や出社拒否、家族とのトラブルに発展する。ネット利用を妨げると暴力をふるわれることもあるようだ。

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