国家賠償法は「公務員の不法行為」が必要
もう一つの国家賠償法は、誤認逮捕された人の味方になってくれるのか。
同法の場合、国や公共団体に損害賠償を求めるには「公務員の不法行為」という用件が必要となり、このハードルが実に高いのだ。
遠隔操作ウイルス事件に当てはめると、警察側は高度なサイバー犯罪に対応する知識不足などから誤って4人の身柄を拘束したが、それ自体は職務行為として不法行為とはみなされにくい。冤罪事件の被害者が起こした国家賠償請求訴訟でも、判決の大半は逮捕・起訴した警察官や検察官の行為を不法行為と認めてはいない。
ハードルの高さからか、足利事件の犯人として17年半拘束された菅家利和さんでさえ、国賠訴訟を起こしていない。
一方、郵便不正事件で無罪が確定した元厚生労働省局長の村木厚子さんが、国などに約4100万円の支払いを求めた国賠訴訟では、国は2011年10月に公務員の不法行為を認めて休職中の給与分など約3800万円の支払いを認めた。
だが、これは検察官による証拠改ざんという決定的な証拠が明らかとなったからで、国家賠償訴訟の中では極めてレアケースとされている。