参入抑制より適格認定制度の方を
文科省官僚も、内心では今の審査基準では裁量が少ないので、裁量のある以前の基準に戻したいのだろう。そこで、田中文科相を今回支えたのは、文科省官僚にとっても千載一遇のチャンスだったからと考えられなくもない。官僚はただでは転ばないのだ。
問題は、新規参入の抑制で大学の質を高められるかだ。大学の品質保持は重要な視点だが、そのために新規参入を抑制するのではなく、参入・退出を緩やかにしても大学の適格認定する制度の方が、大学の品質保持の観点から望ましい。そのため2003年から「認可」はするが大学設立の参入規制をなくしたわけだ。
海外においても、大学の設置については認可と同様な仕組みがとられているが、それは品質保持のためであり、新規参入を抑えるという話はきかない。今回の騒動は目くらましで、以前の文科省官僚の裁量での新規参入抑制に逆戻りだと事態は最悪なことになる。
また、もし設置基準を議論するなら、認可権限を地方分権することも考えたらいい。英、仏ではほとんどの大学が国立であるので、国が認可するのは自然だ。一方、日本は国立大のほか私学や地方大学が多く、米、独、豪など国立大がほぼなく私学や地方大学が多い国と似ているが、日本では国の認可、それらの国では州政府の認可となっている。「地方」が認可すれば、実情に即した合理的な解決が可能だ。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。