日本でも新聞各紙が電子版に力を入れるなか、その先駆けとも言える米ニューヨークタイムズ紙の電子版の購読者数が紙媒体の購読者数を上回ったことが明らかになった。それでも、現時点ではこの傾向が収益改善に寄与しているとは言えず、前途は多難だ。
全体の部数も4割伸びる
米発行部数監査会(ABC)の調べによると、NYT紙の平日版の総部数は12年9月30日時点で前年比40.3%増の161万3865万部。内訳は紙媒体が71万7513部に対して、電子版は紙媒体を大きく上回る89万6352部だ。電子版の大幅な伸びが、全体の部数を引き上げたとみられる。
なお、発行部数が米国で最も多いウォール・ストリート・ジャーナルの場合、全部数229万3798万部に対して、電子版は79万4594部で、全体の35%に過ぎない。米国紙全体で電子版が占める割合は15.3%だ。NYT紙が急激に電子版に移行していることがうかがえる。
だか、この傾向は、必ずしも経営が良くなっている訳ではないようだ。同紙の運営会社が12年10月25日に発表した12年第3四半期(7月1日~9月30日)の決算によると、純利益は前年同期比85%減の228万ドルで、売上高は同0.6%減の4億4900万ドルと微減している。デジタル版の伸びに支えられる形で、購読収入は同7.4%増の2億3400万ドルだった。しかし、広告収入が8.9%減の1億8200万ドルで、広告収入の落ち込みで購読料の伸びではカバーできなかった。
紙媒体の広告収入が特に苦戦
特に苦戦を強いられているのが紙媒体の広告収入で、10.9%減。電子版は2.2%減にとどまった。紙媒体が「新聞不況」から脱しきれていないのはもちろん、電子版の広告も単価が低下傾向で、第4四半期についても、この傾向は続くと同紙では予想している。
なお、国内で最初に電子版を発行した日本経済新聞の12年1~6月期の連結業績は、売上高が前年同期比2.9%増の1464億7200万円、営業利益が同77.0%増の92億6800万円、純利益が同60.7%増の63億2600万円と、比較的好調だ。
販売収入は、NYT紙同様に紙媒体の減収を電子版が補う形で増収を達成。広告収入も、11年の需要減の反動で増収となっている。
同社の発表によると、電子版の有料会員数は12年4月に20万人を突破しており、電子版読者が紙媒体購読をやめてしまう「カニバリゼーション」がどの程度起こるか、業界では注目されている。