「勝てば何でも許されるのか」 巨人日本一でもイマイチ盛り上がらず

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   今年のプロ野球は2012年11月3日、巨人が日本ハムとの日本シリーズに4勝2敗で勝ち、3年ぶりの日本一を奪還して締めくくった。球界にとっては盟主が頂点に立ったことで万々歳といったところなのだが、世間の野球離れの感覚とは温度差がある。

巨人出場の日本シリーズで「ラジオ日本」中継なし

「堂々と戦ってくれた選手の姿は歴史に残る」

   巨人の原辰徳監督は優勝をそう総括した。よほど感動したのだろうが、まるで評論家の感想である。それはともかく、プロ野球界の方々の多くは、巨人日本一という最高の形でシーズンを終えた、と思っているだろう。最終戦の視聴率は関東地区で23.3%。今季プロ野球中継としては最高記録だった。

   ところが、プロ野球の関心度、人気の観点からみると、よくない兆候がうかがえる。たとえばラジオ放送で驚くことがあった。神奈川に本拠を置く日本テレビ系「ラジオ日本」という局がある。巨人戦の中継で知られ、巨人人気の一翼を担っている。その局が日本シリーズを一切中継しなかった。

   聞くところによると、「聴取率が取れそうもない」ということで、当初の編成計画の段階から、はずされていたようだ。また、日本シリーズの前売り券が売れ残った、という話も聞いた。公式戦の巨人戦チケットは、今や「当日でも買える」時代なのだが、巨人出場の日本シリーズでは考えられなかったことだ。

巨人ファン以外は醒めていた?

   優勝を報じた4日付けの朝日新聞に、興味深い記事が載った。「なかったことには出来ない」との見出しで、「原監督が女性問題で元暴力団関係者に1億円を払った」ことと「巨人が新人契約金の最高標準額を大幅に超える額を複数の選手に支払っていた」を取り上げ、加藤良三コミッショナーの対応を批判した。この記事の意味するところは大きい。

   巨人日本一、原監督日本一はいいのだが、世間はそのようなスキャンダルを覚えていて、心から盛り上がらないのである。「原の采配はよかった」と称えても「1億円がねえ」となってしまう。それが世の中というものなのだ。

   日本一になった日、巨人の球団幹部は「(来季も)原監督の元で強い巨人を維持してほしい」と原続投を示唆している。だから勝てば何でも許されると取られてしまう。巨人ファンは認めても、素直に容認できないそれ以外のファンは大勢いる。

   日本のプロ野球は相変わらず巨人中心で回っていることに変わりはない。かつてスポーツ紙の一面は巨人選手で毎日埋められた時代があった。ところが現在は違う。ほんの2、3年前まではマイナーだった女子サッカー「なでしこ」がトップを飾る。この辺をプロ野球界は理解していない。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)

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