2012年12月期決算で上場来最高益の更新を狙う日本マクドナルドホールディングスが、13年12月までに通常の閉店に加えて110店舗を閉店する計画を、11月1日に発表した。
現在ある約3300店舗のうち、3分の1にあたる1200店舗は月商で1000万円以下だったり、フルメニューが提供できなかったりする「成長に限界がある店舗」という。外食産業の「勝ち組」とされたマクドナルドも、これまでの勢いを失いつつあるようだ。
ハンバーガー市場は全体では「上向き」
2012年2月9日に、12年12月期の連結業績を増収増益とする見通しを発表した日本マクドナルド。1か店あたりの売上高の高い新店の寄与などを見込み、上場来最高益となる営業利益294億円(11年比4.3%増)を目指していた。
ところが、11月1日に発表した第3四半期(12年1~9月)の連結売上高は前年同期比1.1%減の2207億円。営業利益は17.8%減の177億円で、2月に掲げた「目標」にはまだ117億円足りない。
大型ドライブスルーの新店効果やバリューキャンペーンを継続的に強化したことで全店客数は前年比5.2%増、既存店客数も2.9%増えた。しかし、全店売上高は前年比0.4%増加したものの、既存店売上高は2.2%減少した。
原田泳幸会長兼社長は「(フランチャイズ店の)オーナーとの交渉やPL(損益計算書)とのバランスを見ながら、(不採算店舗の閉店を)加速していく」という。
その一方で成長戦略と位置付ける「マックカフェ」は、郊外型ドライブスルーの新店を中心に積極展開。12年は30店舗前後だが、13年は全国100か店以上に拡大。中長期的には500~600店舗を計画している。
また、10月末時点で17店舗で実施しているデリバリー・サービスを、13年末には250店舗に拡大する。原田会長は「デリバリーのポテンシャルは、1500店舗、500億円以上ある」とみていて、消費者のニーズに応える。
ハンバーガー市場は2011年に前年比1.5%減の6973億円と8年ぶりのマイナスとなったが、市場調査の富士経済は「これは市場を牽引してきたマクドナルドの契約終了などの閉店数が多かったことなどが影響したため」と指摘する。
同社は12年の見通しを3.5%増の7215億円と予測。「バーガーキングがFC展開を加速し、また宅配に参入したこと、昨年12月に再上陸したウェンディーズが高級食材を使用した今までにない商品を展開し注目を集めていることなどから、市場は再びプラスに転じる」とみている。
「食べ放題」で巻き返すファミレス
外食産業はここ数年、「低価格」に強みをもつ企業がけん引してきた。マクドナルドをはじめ、居酒屋チェーンのワタミや「丸亀製麺」などのトリドール、イタリアンのサイゼリア、290円「中華そば」の幸楽苑、「餃子」の王将フードサービスなどがそれ。
これらの外食企業は、「値ごろ感とクオリティの両立が上手にいっている」(大手証券のアナリスト)と話す。
ただ、牛丼チェーンの過剰な安売り競争が消費者に飽きられたように、「低価格」だけでは勝負にならなくなってきた。
そこに台頭してきたのが、ファミリーレストランの「新顔」だ。富士経済によると、「ステーキ・ハンバーグ」のファミレス市場は2011年が1783億円で、前年比15.3%と急伸した。12年は6.8%増の1905億円を見込んでいる。
ステーキ・ハンバーグ&サラダバーの「けん」を展開するエムグラントフードサービス(非上場)が導入したサラダバーの食べ放題が消費者に受け入れられ、10年以降は「ステーキガスト」や「カウボーイ家族」など、同様のスタイルをとるチェーン店の新規参入が相次いだ。
12年はイタリアンや中華、ちゃんぽん、バイキングレストランや高価格型のファミレスも好調で、ファミレス市場全体でも0.7%増の1兆3694億円と6年ぶりにプラスに転じる勢いだ。