次期総選挙前には党としての首相候補を選定する――。日本維新の会(維新)代表の橋下徹大阪市長が2012年9月下旬にこうした意向を示してから1か月以上が経過した。
「新党結成を表明した石原慎太郎東京都知事か」「橋下代表自らか」「第三の人物か」。解散時期は未定ながらも第三極として既成政党と対決する維新の首相候補をめぐり、周囲の関心は高まっているが、まだ簡単には決まらないようだ。
「首相候補なし」は維新のウイークポイント
「第三極のボスは石原さんですよ、それは。ずば抜けたビッグネームですから」 「僕は石原さんの力を借りたいと思っています。たちあがれ日本のメンバーの力は全く必要ないですが」
維新と石原新党との協力関係をめぐり、橋下代表は11月1日の大阪市役所での記者会見でこう述べた。
ただ、維新としての首相候補について問われると、この日衆院本会議で維新として初の代表質問を行った松野頼久・維新国会議員団代表の名をまず挙げて「松野議員は当然有力な候補になるでしょう」。一部報道では、この日の代表質問原稿も「橋下代表が事前に目を通して修正を加えた」といい、遠隔操作が可能な人物としてみているのかもしれない。
その一方、「石原さんのボスっていうのは、第三極の象徴的な(人物)という意味で。首相候補かどうかっていう話は全然していませんのでね」と語った。「石原御大はすごい」「尊敬する点を挙げたらきりがない」と賛辞を送っていた橋下代表にしては冷たい対応にも思えるが、やはり石原氏個人と「たちあがれ日本」のメンバーを背負った石原氏では話は別物なのだろうか。会見では「石原さんはたちあがれのメンバーと、最後まで行くんでしょう」とも言った。
橋下代表が自らの衆院選出馬について否定している以上、党代表以外から首相候補を選ばざるを得ない日本維新の会。今も首相候補を決められない事態を「維新の大きなウイークポント」と見るメディアも少なくない。
橋下代表、自らの国政転進に含み?
「第三極のボス」としながらも、首相候補としては石原氏にクエッションマークを付けた11月1日の橋下代表の記者会見について、翌2日午前の民放各局はニュースやワイドショーで大きく取り上げた。
その中で、橋下代表の発言の真意をめぐって興味深い見方を示したのは政治アナリストの伊藤惇夫氏だ。
「ボスは石原さんと言いながらも、『ただし総理候補かどうかの話はしていません』というのは、『私(橋下)もあるよ』ということに含みを持たせている、と見ることができます」
と述べ、
「国政選挙前に(橋下氏の)国政転進がゼロかというと、ゼロとは言い切れない。だから、首相候補について具体的に言及しなかったのは、今後どういう展開があるか分からないということです」
と話した。
とはいえ、報道各社が10月下旬に報じた世論調査では、維新の政党支持率は2%ほどで低空飛行を続けている。維新が連携を呼びかけるみんなの党にしても1%ほど。現状では橋下氏が前言を翻して維新の首相候補として国政進出する以外に、低迷を打開する道はないように思えるのだが。