サムスンにデザインを盗用されたとイギリスで訴えて退けられた件を巡り、米アップルが「反省文」の48時間以内の書き直しを命じられた。
「アップルほどクールじゃない」という別の裁判の判決理由の引用や、判決の不当性を滲ませた内容が指示通りでなく不正確というのが理由だ。
英控訴院は「アップルのような会社がこんなことをするとは失望した」などと、不快感を示したと言う。
英控訴院「明白な命令違反」「失望した」。
発端は2012年10月18日(現地時間)、Apple(アップル)UKが英高等法院に続き、英控訴院でも敗訴したことにさかのぼる。日本の司法制度でいうと、英高等法院は地方裁判所、英控訴院は高等裁判所に相当する。終審裁判所として最高裁判所がある。
英控訴院はアップルに対し、「10月18日の控訴院での判決は、サムスンがアップルの製品をコピーしたという主張が誤りとするものだった」という文章をウェブサイトや英主要紙に掲載するよう命じた。
命令に従い、アップルは10月下旬にサイトに「反省文」を掲載した。ところが、サムスンが「誤解を招く」と抗議した。ブルームバーグはじめ海外メディアが相次いで報じたところによると、英控訴院の判事らも11月1日、「明白な命令違反」「アップルのような会社がこんなことをするとは失望した」などと指弾し、不快感を示したと言う。
そして、英控訴院は、アップルに当該文書の削除と「不正確だったと認める」旨を、少なくとも11ポイント以上の大きさのフォントを使用して、48時間以内に掲載するように命じた。また、期間も12月14日までに延長した。
アップルは、「技術的な問題」で対応に少なくとも14日必要だと申し立てたが、「テクノロジー企業のアップルができないとは信じられない」と却下されたそうだ。
一体どんな「反省文」?
「反省文」とは一体どんなものだったのだろうか。
アップルUKのサイトを開くと、新製品iPad miniの画面いっぱいに広がる写真が目を引く。そのページの最下部に、「サムスン/アップルUK 判決」という小さな文字のリンクが、コピーライトやプライバシーポリシーなど一般の人はほぼ目をやらないような項目にならんで置かれていた。どうやらこのリンク先が、問題の「反省文」らしい。
開いてみると、冒頭に
「2012年7月9日、イギリスの高等法院は、サムスンのギャラクシータブレット10.1、8.9、7.7はアップルの特許No.0000181607-0001を侵害していないと判じました」
とある。
驚きなのは、これに続くレトリックだ。
「サムスンの製品はアップルのデザインと同じような、控えめで究極的なシンプルさをもっていない。アップルほどクールではない」
という「英高等法院」での判決理由の一部を「重要な指摘」として引用した上で、直後に
「この判断はEU中で効力を持ち、2012年10月18日の控訴審でも支持されました」
と書いた。
これではまるで、「アップルほどクールではない」ことがEU中に知られていて、10月18日の控訴審でも確認されたかのようにも読めてしまう。
さらに、ドイツやアメリカでは類似の裁判で勝訴したことを引き合いに出し、「他の裁判所はギャラクシータブレットを制作する過程で、サムスンが意図的に、より人気があるアップルのiPadをコピーしたと認めているのです」と文章を括って、不当な判決であるとの見方を滲ませた。
確かに、「10月18日の控訴院での判決は、サムスンがアップルの製品をコピーしたという主張が誤りとするものだった」とは、とても読み取れない文書だ。サムスンや英控訴院は、「反省文」の趣旨から離れた、自社の主張に固執する弁解がましい内容に怒ったということらしい。
なお、新たな命令から24時間以上経過した2日18時現在も、アップルUKのサイトは更新されていない。