企業の社員研修を受託している企業が発行する「人材育成新聞」の内容が「スゴすぎる」と話題になっている。
発行しているのは、「くら寿司」を展開するくらコーポレーションなどの研修を担当した企業だ。いったいどんな内容なのだろうか。
「人権教の狂信者が増えている」
2012年10月31日、労働環境が劣悪な企業を選出する「ブラック企業大賞」企画委員のジャーナリスト、松元千枝さんがこんなツイートをした。
「さっきブラック企業大賞実行委員会で入手した『人材育成の新聞』という代物。大見出しは『人権が国を亡ぼす』だよ。『・・・経営やビジネスといった最も縁遠い領域にまで、人権というペスト菌が蔓延しはじめている・・・。』⇒こんなことが書けちゃう業界紙。『ペスト菌』だよ。すごい言われよう」
ブラック企業大賞企画委員会が資料を収集している中で、この新聞を知ったという。ブラック企業大賞企画委員は「週刊金曜日」で署名記事を書くルポライターや首都圏青年ユニオンの書記長らで構成されており、松元さんは労働運動の情報ネットワーク「レイバーネット日本」に所属している。ツイートは11月2日18時現在、947回リツイートされ、反響を呼んでいる。
この新聞は「人材育成新聞『ヤァーッ』」というもので、社員研修を受託する「アイウィル」という会社が発行している。問題の文章は1997年5月号に掲載されたもので、筆者は同社社長の染谷和巳さん。会員向けの新聞ということで、同社のサイトでは現在公開されていないが、「戸塚ヨットスクールを支援する会」のサイトで読むことができる。
「基本的人権、人権尊重、人権蹂躙、人権擁護――これは、1度抜けば魔剣の切れ味で相手を黙らせることができる言葉である。この魔剣を振り回す人権教の狂信者が増えている。経営やビジネスといった最も遠い領域にまで、人権というペスト菌が蔓延しはじめている…。」
などと書かれている。
くら寿司研修の「入社辞退強要」疑惑で話題に
アイウィルは以前、くらコーポレーションの内定者研修を担当した会社として話題になったことがある。
2010年9月1日放送の大阪・毎日放送「VOICE」が、「くらコーポレーションが内定者に入社辞退を求めた」と報じた。くらコーポレーションの研修では、社訓の「くら社員三誓」を35秒以内で暗唱することが課題として出された。これを研修でできなかった内定者が入社辞退を求められたというのだ。番組内では、「三誓暗唱」に挑んだアナウンサーも「難しい」と指摘していた。
当時、アイウィルはJ-CASTニュースの取材に対し、「うちは内定辞退を求めるよう差し向けたことはありません。くらさんも、社員を大切になさる会社ですので、そんなことはしていないと思います」と説明していた。
こうしたこともあり、今回松元さんのツイートから「人権が国を亡ぼす」の文章を知った人は、ツイッターで「軍隊状態の研修らしいですね…人権蹂躙は許されない行為」と批判の声を上げている。
この文章がどういう真意で書かれたものなのか、また批判意見に対する反論はないか、アイウィルに問い合わせてみたが、染谷さんが長期で出張しているため話できることはない、と言われてしまった。
ちなみに、「ヤァーッ」12年10月号には、「帰属意識の育て方」という見出しで、「我を抑えて会社の方針に従う、会社のために犠牲的精神を発揮して尽力するというポジティブな帰属意識を社員に持たせることはできるのか」をテーマにした染谷さんの文章などが掲載されている。