パナソニックは、2013年3月期の連結最終損益(米国会計基準)の見通しを500億円の黒字から7650億円の赤字に下方修正する、と2012年10月31日に発表した。2期連続で7000億円を超える巨額の最終赤字に陥る。
決算会見では津賀一宏社長が「われわれは負け組」と発言。スマートフォン(高機能携帯電話)の携帯電話事業や、薄型テレビなどのデジタルAV事業で、米アップルや、韓国のサムスン電子やLG電子などの海外メーカーに敗れた。
「負け組」発言のせいもあってか、パナソニックの株価は11月1日、年初来安値の414円を記録。前日から100円(19.46%)下げて、ストップ安となった。
携帯電話事業を除けば、営業黒字は確保
家電大手のソニーやシャープとともに苦戦を強いられているパナソニックは、第1四半期(12年4~6月期)が終わった時点では、最終損益が128億円の黒字と前年同期に比べて430億円強改善していて、回復傾向が最も鮮明だった。
ところが、9月中間期の売上げは前年同期比9%減の3兆6381億円。最終損益は6851億円(前年同期は1361億円の赤字)の大幅な赤字に転落した。
同時に発表した2013年3月期の業績見通しでは、売上高は7%減の7兆3000億円と従来予想を8000億円下回り、最終損益は7650億円の赤字になると発表。本業のもうけを示す営業利益は1400億円の黒字の確保を見込んでいる。
同社の河井英明常務は、「薄型テレビなどの家電製品の落ち込みが当初の想定よりも極端で、下期も続く見通し」としている。
これに伴い、年間配当も1950年5月期以来63年ぶりにゼロ(前期は10円)にする。津賀社長は「株主に申し訳ない」と、頭を下げた。
わずか3か月で、黒字から6000億円超もの赤字に転落したパナソニック。いったい何があったのか――。同社は、こう説明する。
第2四半期決算では、リストラ効果もあって営業利益は873億円と84%増え、携帯電話事業を除くすべての事業部門で営業黒字を確保した。
「薄型テレビなどのデジタルAV事業は急速に悪化しましたが、白物家電は好調です。赤字の要因は、ソーラー事業や民生リチウムイオン電池事業、携帯電話事業ののれん代などの無形資産を減損処理し、また将来の税負担の軽減を見込んで計上していた繰り延べ税金資産を取り崩した結果です」
成長事業とみて積極的に投資してきたソーラーやリチウムイオン電池などの事業だが、「目算が狂った」というわけだ。