ソフトバンクが、イー・アクセスの子会社化を断念したと一部で報じられ、様々な憶測が出ている。孫正義社長の狙い通りなのか、それとも誤算があったのか、ということだ。
「子会社化断念」は、産経新聞などが2012年10月31日に報じた。
電波両取りを総務省が懸念した結果か
それによると、ソフトバンクは、イー・アクセスを一時的に完全子会社にするが、その後は出資企業を募って、株式保有比率を引き下げる方向となった。連結対象外になる3分の1未満にする案などが挙げられているという。
その理由としては、割り当てられた電波をソフトバンクが両取りしてしまう形になることを総務省が懸念していることがあるとされた。そして、割り当てられた電波について、イー・アクセスが基地局開設計画を予定通り行えるかということや、割り当て時に3分の1以上の出資比率を持つ関連会社が同時申請できないとする指針が実質的にほごにされたことが、問題点に挙げられている。
つまり、ソフトバンクは、こうした総務省の懸念に配慮したという推測だ。
報道に対し、ソフトバンクは、「現時点で決まった事実はありません」、イー・アクセスも「完全子会社となる計画に変更はございません」とそれぞれのサイトで反応した。一方、ソフトバンクの孫正義社長は、この日の決算発表会で、子会社化後に株式保有比率を3分の1未満にすることなど様々な案があることを認めた。
総務省の移動通信課では、取材に対し、今回の買収でソフトバンク側に報告を求めていることを明らかにした。
「電波を独占的に使うわけですから、その割り当てで基地局の開設計画が予定通り行われるか懸念するのは当然です。ですから、株主構成が変われば、基地局に投資するための資金調達がどうなるのか、その影響を確認することになります」
「LTE」に必要な基地局開設計画を見直し?
子会社化について、総務省では、「その事業者の判断」だとし、問題点があるかについては、「ソフトバンクからまだ回答がないので、言える立場ではない」とした。しかし、ソフトバンクが電波の割り当て後に子会社化を打ち出したことについては、「法律上の規制はないが、個別に考えないといけない」と不快感を示した。
国際金融アナリストの小田切尚登さんは、総務省には誤算があったのではないかとみる。
「電波割り当てしたライセンス企業を買収するのはダメと総務省は言うべきだったのに、手当てをしていなかったのでしょう。海外ではこうしたやり方は認めておらず、その意味で、孫正義社長のは奇策と言えると思います」
買収そのものについて小田切さんは肯定的で、「M&Aは、話があったときにやらないと、ライバルが勝ったり、株が値上がったりします。タイミングが大事で、孫社長が決断したのも仕方がないと思います」と言う。
ただ、米スプリント・ネクステルも買収した結果、高速通信サービス「LTE」に必要な基地局開設計画をソフトバンクが見直さざるをえなくなった可能性を指摘している。
「最初は楽に買収できると考えたのかもしれませんが、米企業買収による株価下落などで資金繰りが厳しくなっているのだと思います。それで、100%株を買わなくても、と考えたこともあるのでしょう。その意味で、ソフトバンクにも誤算があったかもしれませんね」