「法規制の抜け穴」が招いた事故
「男子高校生が死亡した2006年の事故が、教訓となっていないのでは」
「事故は法規制の抜け穴が招いた」
金沢での今回の事故をめぐり、11月1日午前の民放各社のワイドショーではこう指摘するコメンテーターが多かった。
2006年の死亡事故は、国土交通省などの調査結果、エレベーターのブレーキ部分の磨耗によって引き起こされていた。これを受けて同省は建築基準法を改正し、09年以降に設置するエレベーターには通常ブレーキのほか、扉が開いたままカゴが上昇・下降することを防ぐ補助ブレーキの設置を建物所有者に義務付けた。
ところが、今回の事故機が設置されたのは09年の11年前の1998年。磨耗を検知するセンサーは付けたものの、「二重の安全装置」に当たる補助ブレーキは設置していなかったのだ。国交省は12年度の単年度事業として補助ブレーキを付ける際の助成制度を設けたが、あくまで任意という。09年以前のエレベーターは『既存不適格』という位置づけで、「義務化の対象外」(住宅局建築指導課)と話す。
事故機の所有者のアパホテル側に「法的義務はないとはいえ、補助ブレーキをなぜつけなかったのか」と質問してみた。担当者は「会社としてのコメントは出しにくい」と話すのみだった。
国交省によると、09年以前に設置され、補助ブレーキが付いていないエレベーターは現在、日本で約70万台稼動しているという。