消費増税が住宅市場に与える影響が懸念される中、国土交通省は住宅取得の負担軽減策のたたき台となる案をまとめた。2013年末で期限切れとなる現行の住宅ローン減税を拡充し、最大減税額を10年間で500万円と過去最大規模に引き上げることなどが柱だ。12月の来年度税制改正大綱に盛り込みたい考えだが、財務省がスンナリ認めるかは、予断を許さない。
消費税率は2014年4月に現行の5%から8%に、2015年10月には10%に引き上げられる予定だが、住宅購入は「一生に一度の買い物」とされ購入額の規模が大きく、消費税の負担は重い。
ローン残高の上限を5000万円に引き上げ
このため増税直前までの駆け込み需要と導入後の反動減は避けられず、深刻な反動減が景気を冷え込ませる恐れもあることから、住宅所得時の負担軽減策が早急に示されるよう求められている。
たたき台は10月23日の政府税制調査会の全体会合に提出された。住宅ローン減税は、住宅ローンを組んで家を建てる場合、所得税や住民税からローン残高の一定割合を差し引く制度で、現行の住宅ローン減税は2013年入居分までが対象。国交省案ではこれを2018年末まで5年間延長する。
さらに、現行制度では2013年に入居する場合、減税の対象になるローン残高の上限額は2000万円で、10年間で最大計200万円(年20万円ずつ)の減税だが、2014年から5年間は対象残高の上限額を5000万円に引き上げ、10年間で最大計500万円(年50万円ずつ)の減税にするというものだ。
所得が低い人向けの支援策も検討
また、国交省案では、所得が低い人は所得税が少なく、一定の所得がある人たちと同じレベルの住宅ローン減税の恩恵が受けられないケースがあるとして、こうした人たちに配慮するため、現金給付による支援策も検討する必要があると指摘。さらに、住宅を取得する時にかかる登録免許税や印紙税、不動産取得税はいずれも非課税とすべきだとした。
国交省案は、市場の混乱を避けるため、こうした具体的な負担軽減策を早急にまとめ、2012年末までに消費者に明示するべきだと強調した。
1997年4月に消費税率が3%から5%に引き上げられた前回の増税の際も、1997年度の新設住宅着工戸数が前年度比17.7%減にと大幅に落ち込むなど激しい反動減が生じ、住宅市場の悪化が景気冷え込みの大きな要因になったとの指摘は少なくない。
「前回のような駆け込み需要とその反動で大幅な住宅着工の落ち込みが発生する恐れがある」(国交省)との声は大きく、住宅関連業界からも十分な対策を求める声が日々強まっている。ただ、手厚い住宅ローン減税は大きな税収減につながりかねず、これを懸念する財務省は慎重な姿勢を崩していない。国交省案がそのまま通る可能性は低い。