スーパーやコンビニでは、高齢者向けの宅配サービスにタブレット端末を活用するところが増えている。
パソコンやスマホは苦手という人でも簡単に操作できることもあって、シニア世代を狙った新商売がいろいろ出てきそうだ。
容易な操作と軽さはシニア向き
タブレット端末の特徴は、指先ひとつで大半の操作が可能で、キーボード入力の必要がないうえ軽くて持ち運びが便利なこと。
エイジング社会研究センター代表理事で東北大学特任教授の村田裕之氏は「これまでノート型パソコンに縁のなかった人、パソコン利用を躊躇していたシニア世代もタブレット利用者になる可能性が大きい」と自身のブログに記している。
小売業界ではタブレットの利点に注目したサービスが始まっている。2011年時点では60代以上の通販利用者のうち携帯電話やタブレット端末からの注文は「男性8・7%、女性3・6%」(日本通信販売協会調査)にとどまっている。しかし、高齢者層でのタブレット普及を見越し、コンビニやスーパーがネット通販・宅配に力を入れ始めている。
NTT東日本とセブンイレブンジャパン、独立行政法人都市再生機構(UR)は共同で2011年2月から、「買い物弱者」とされる高齢者向けなどにネットで注文を受けて宅配するサービスをUR住宅で試験的に実施。無料でタブレットを貸し出し、現在は都内3か所に加え福島県内の被災者住宅地区でも行っている。
高齢者世帯にタブレットを無料で貸し出し
またユニー、阪急・阪神百貨店グループなどの大手をはじめ、全国各地のスーパーもタブレットによる食品宅配事業に相次いで参入、シニア層を主な対象に、きめ細かなサービス提供に取り組んでいる。高齢者世帯に足を運んで無料でタブレットを貸与し、商品注文の仕方を伝えて顧客増を目指すネット販売専業の食品スーパーも増えているという。
第一生命経済研究所によると、2011年の60歳以上の消費額は約101兆円(前年比2・4%増)で、個人消費の全体の44%を占める。2012年に65歳を迎えた団塊世代は消費意欲も強く、タブレットを含むネット販売が今後の売り上げを左右する可能性もある。
米国の市場調査会社NPDディスプレイサーチとNHKによると、iPadなどのタブレット端末の市場は2010年から一気に拡大。全世界での出荷台数は、2012年約1億2400万台で3年後の2015年は約2億7600万台、この時点でノート型パソコンの予想出荷台数約2億7000万台を追い抜くと見込まれている。
国内でもタブレット端末の出荷台数は増加の一途をたどり、2011年の約360万台から2012年は520万台、3年後の2015年は958万台と予想されている。